再発・難治性の悪性脳腫瘍を対象に新規放射性治療薬「64Cu-ATSM」を評価したSTAR-64試験の結果を発表

2024/08/09

文:がん+編集部

 再発または難治性の悪性脳腫瘍を対象に、新規放射性治療薬「64Cu-ATSM」を評価した第1相医師主導試験STAR-64試験の結果を発表。安全性と有効性が認められました。

64Cu-ATSMの投与により、6か月以上の生存率77.8%、1年以上の生存率66.7%

 国立がん研究センターは2024年6月25日、STAR-64試験の結果を2024年米国臨床腫瘍学会年次総会で報告したことを発表しました。

 STAR-64試験は、標準治療終了後の再発した悪性脳腫瘍(悪性神経膠腫、原発性中枢神経系悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍、悪性髄膜腫)患者さんを対象に、64Cu-ATSMの安全性評価を行い、最大耐用量および第2相試験以降の推奨用量を決定することを目的とした医師主導第1相試験です。主要評価項目は用量制限毒性発現割合、副次的評価項目は奏効割合、無増悪生存期間、内部被ばく評価による推定実効線量、有害事象の発現割合、ステロイド非増量割合、KPS非悪化割合などでした。

 安全性に関する解析では、64Cu-ATSMの投与に起因する重篤な毒性兆候は観察されず、悪性脳腫瘍の患者さんに対する64Cu-ATSMの投与法として、99MBq/kgの7日ごとに4回の投与が推奨されると結論付けられました。

 有効性に関する解析では、64Cu-ATSMを投与した患者さんの77.8%が6か月以上、66.7%で1年以上の生存が認められました。また、膠芽腫の患者さんでは、55.6%で1年以上の生存が認められました。膠芽腫の患者さんは再発すると、一般的に1年以上生存される患者さんは30~40%であり、有効な治療効果が期待される可能性があると考えられました。

 本試験の結果を受け、悪性神経膠腫の患者さんを対象に、64Cu-ATSMと従来の標準治療を比較する第3相STEP-64試験が開始されました。

  64Cu-ATSMで用いられている放射性核種64Cuは、既存の放射性治療薬(131 I や 90 Y、177 Lu)で放出されるベータ線の他に、がん細胞 DNA を効果的に損傷する特殊な電子を放出するため、がん細胞に対し高い殺傷効果が期待できます。64Cu-ATSMは、低酸素化した治療抵抗性腫瘍を攻撃する治療法で、既存治療法で十分な効果が得られず再発した悪性脳腫瘍の治療において効果を発揮することが期待されます。