【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年7月22日)
2025/07/22
文:がん+編集部
人生の最終段階における医療と療養生活の質、ご遺族を対象とした調査結果が発表
国立がん研究センターは2025年7月3日、2021年に死亡した患者さんのご遺族を対象に、人生の最終段階で受けた医療や療養生活の実態を把握する全国調査の結果を発表しました。
同調査は、がんを含む主要10疾患(がん、心疾患、脳血管疾患、肺炎、腎不全、血管性などの認知症、アルツハイマー病、慢性閉塞性肺疾患、誤嚥性肺炎、老衰)により死亡した患者さんのご遺族を対象として、ご遺族の視点を通じて患者さん本人が受けた医療や療養生活の実態を評価したものです。また、2018~2019年度に実施した前回調査結果との比較も行われました。
調査結果のポイントは、以下の通りです。
死亡場所で受けたケアの質
医療者がつらい症状にすみやかに対応していたと回答した割合は65~81%で、がん・心疾患・脳血管疾患では前回調査より2~3ポイント低下しました。死亡場所での医療に満足していたご遺族は65~81%で、がん・肺炎・腎不全では2~5ポイント増加しました。
医療に関する希望の話し合い
医師と最期の療養場所を話し合う割合は、前回調査より増加しました。
新型コロナウイルス感染症の看取りへの影響
入院・入所者の多くが面会制限により思うように面会できなかったと回答し、特にがん患者さんでは、面会制限を避けて自宅療養を選ぶ割合がやや高くなっていました。
死亡前1カ月間の療養生活の質
からだの苦痛が少なく過ごせたと評価された割合は全体の37~53%で、がんでは前回調査から4ポイント低下しました。希望の場所で過ごせた割合はがんを含む5疾患で増加しました。
がん細胞を確実に「死」へと導く新たなメカニズムが解明
東北大学は2025年7月4日、がん細胞に対してアポトーシス(細胞が自身の死を積極的に引き起こす細胞死の仕組み)を誘導できる新たなメカニズムを発見したと発表しました。
多くのがん細胞では、遺伝子変異により典型的なアポトーシス誘導経路が機能せず、アポトーシスに耐性を示します。研究グループは、がん細胞の無秩序な増殖を抑制する腫瘍抑制遺伝子「LKB1」が、典型的な経路とは別の経路によってアポトーシスを誘導することを発見しました。
LKB1の遺伝子変異は、腸管ポリープやがん発症リスクの顕著な上昇を特徴とするポイツ・ジェガース症候群の原因として知られています。今回の研究で、ポイツ・ジェガース症候群やがんで見られるLKB1変異体はこの新たな経路によるアポトーシスを誘導できなかったことから、このメカニズムががん発症の抑制に重要であることが示唆されました。
治療抵抗性を示すがんに対する新たな治療法の確立が期待されます。
ナノ粒子を用いて腫瘍内の血管を破壊する新しいがん治療法の開発に成功
金沢大学は2025年7月11日、ナノ粒子を用いて腫瘍内の血管を破壊する新しいがん治療法の開発に成功したと発表しました。
腫瘍組織の血管を破壊することで、がん細胞への栄養供給を断つ治療法の開発が進んでいますが、従来の低分子化合物を用いた方法では、腫瘍血管への選択性が乏しく薬効や副作用の面で課題がありました。
研究グループは、腫瘍血管を標的とする脂質ナノ粒子と自然免疫を活性化する脂質ナノ粒子を併用することで、腫瘍血管を選択的に破壊できることを発見。この併用療法による腫瘍血管破壊は、腫瘍組織におけるがん細胞の急速な細胞死を引き起こし、強力ながん治療効果が確認されました。また、免疫チェックポイント阻害薬に耐性を示す腫瘍モデルや、ヒト膵臓がん細胞を含む複数のヒト腫瘍モデルに対しても腫瘍血管の破壊を伴う顕著な治療効果が示されました。新しいがん治療法開発への活用が期待されます。