小児に多いタイプの急性骨髄性白血病に既存の乳がん治療薬が有効?
2018/11/05
文:がん+編集部
小児によくみられるタイプの急性骨髄性白血病(AML)に対して、既存の乳がん治療薬が効果を示す可能性が明らかになりました。今後、研究が順調に進んだ場合、新規の薬剤よりも早く患者さんのもとへ届けられることが期待されます。
CCND3遺伝子に異常があることを新たに発見
京都大学は11月1日、小児によくみられる、MLL遺伝子の再構成を伴う急性骨髄性白血病(AML)の新しい遺伝子変異を発見し、さらに、既存の乳がん治療薬が効果を示す可能性を明らかにしたと発表しました。この研究結果は、米国血液学会発行のオンライン雑誌「Blood Advances」に掲載されました。
AMLは、従来の治療法では再発例が多く、長期生存率が低いことから、新しい治療法の開発が望まれています。なかでも、MLL遺伝子の再構成を伴うAMLは、小児(とくに乳児)によくみられます。しかし、その詳しい遺伝子異常メカニズムは、よくわかっていません。
今回、研究グループは、MLL再構成AMLの検体を用いて遺伝子解析を行いました。その結果、小児症例の約9%、成人症例の約3%で、新たに「CCND3」という遺伝子に異常があることを発見したそうです。また、CDK4/6阻害剤という既存の乳がん治療薬パルボシクリブ(製品名:イブランス)、アベマシクリブ(製品名:ベージニオ)が、CCND3遺伝子変異があるMLL再構成AML細胞株の増殖を抑制することも明らかになりました。
画像はリリースより
将来的に、CDK4/6阻害剤がMLL再構成AML治療の選択肢となり、CCND3遺伝子変異がCDK4/6阻害剤の有効性を予測できる指標となる可能性があるそうです。また、CCND3遺伝子変異を持たないMLL再構成AML細胞株に対しても、CDK4/6阻害剤は有効だとわかりました。そのため、CCND3遺伝子変異以外にもCDK4/6阻害剤の標的となるメカニズムが存在することも考えられるそうです。今後、研究グループは、白血病マウスを用いたCDK4/6阻害剤の有効性の検証などを行う予定だとしています。
研究グループは、「本研究成果はAMLの新規遺伝子変異をターゲットとして、既存の薬剤が有効である可能性を示したものです。つまり、新規の薬剤と比較して臨床応用へのハードルは低いと考えられ、少しでも早く患者さんに届けられるよう、今後も研究を継続していきます」と、コメントしています。