RET遺伝子変異陽性の進行甲状腺髄様がんに対するセルペルカチニブの治験
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治験名
LIBRETTO-531
キナーゼ阻害薬治療歴のない腫瘍増悪が認められるRET遺伝子変異陽性の進行甲状腺髄様がんがある患者を対象としてセルペルカチニブを医師選択治療(カボザンチニブまたはバンデタニブ)と比較する多施設共同、無作為化、非盲検、第3相試験
治験概要:
RET遺伝子変異陽性の進行甲状腺髄様がんに対する治験。キナーゼ阻害薬治療歴のない腫瘍増悪が認められる患者さんが対象です。
セルペルカチニブとカボザンチニブまたはバンデタニブを比較して、有効性と安全性で評価する臨床試験です。
登録予定数は、400人。
フェーズは、第3相臨床試験。
試験デザインは、国際多施設共同、無作為化、非盲検、実薬対照、第3相試験。
試験群:セルペルカチニブ
対照群:カボザンチニブまたはバンデタニブ
治療継続生存期間、無増悪生存期間、奏効率、奏効期間、全生存期間などで評価します。
疾患解説:甲状腺がん
国立がん研究センターのがん統計によると2014年に甲状腺がんに罹患した人は、15816人です。男性が4116人で女性が1万1700人と、女性が多くなっています。
甲状腺にできるがんは、乳頭がん、濾胞がん、低分化がん、髄様がん、未分化がん、悪性リンパ腫がありますが、乳頭がん、濾胞がん、低分化がんの3つが甲状腺がんです。このうち甲状腺がんの約9割が乳頭がんです。
甲状腺がんのステージ分類の特徴は、年齢によって異なることです。
乳頭がんと濾胞がんでは、55歳未満の場合、遠隔転移がなければステージ1、遠隔転移がある場合は、ステージ2となります。55歳以上の場合、がんの大きさ、浸潤度、リンパ節への転移、遠隔臓器への転移を考慮してステージ1~ステージ4Bに分類されます。
甲状腺がんの主な症状は、しこりです。まれに呼吸困難や声のかすれ、ご縁、痛み、血痰などの症状が起こることもあります。
治験薬:セルペルカチニブ
セルペルカチニブは、RETキナーゼを選択的に阻害する分子標的薬です。
RET融合遺伝子と活性化変異を含むRETキナーゼの遺伝子異常は、RETシグナル伝達と制御不能な細胞増殖の原因となります。
セルペルカチニブは、過剰なRETシグナルを抑制することで、がん細胞の増殖を抑制します。
対照薬:カボザンチニブ
カボザンチニブは、RET、MET、VEGF1、2、3受容体とマスト/幹細胞成長因子(KIT)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT-3)、TIE-2(TEKチロシンキナーゼ、内皮細胞)、トロポミオシン-関連キナーゼB(TRKB)およびAXなど複数のチロシンキナーゼを標的とした分子標的薬です。
これらの受容体やチロシンキナーゼの活性を阻害することで、がん細胞の増殖と血管新生の阻害することで、がん細胞を破壊します。
対照薬:バンデタニブ
バンデタニブは、がんの増殖にかかわるRETやEGFR、血管新生にかかわるVEGFなどのタンパク質の働きを抑制する分子標的薬です。
バンデタニブは、特にRETの活性を抑制することで抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。
主な治験参加条件
対象となる人 |
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対象とならない人 |
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パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)
パフォーマンスステータス(Performance Status:PS)は、全身状態の指標で、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。米国の腫瘍学の団体が決めたECOG、Karnofsky、WHOなどの基準があります。
ECOG パフォーマンスステータス
PS 0 | 全く問題なく活動できる 発病前と同じ日常生活が制限なく行える |
PS 1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる 例:軽い家事、事務作業 |
PS 2 | 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない 日中の50%以上はベッド外で過ごす |
PS 3 | 限られた自分の身の回りのことしかできない 日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
PS 4 | 全く動けない 自分の身の回りのことは全くできない 完全にベッドか椅子で過ごす |
出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999 (JCOGホームページより引用)
Karnofsky パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 | |
正常の活動が可能。特別な看護が必要ない | 100 | 正常。疾患に対する患者の訴えがない。臨床症状なし |
90 | 軽い臨床症状はあるが、正常活動可能 | |
80 | かなり臨床症状あるが、努力して正常の活動可能 | |
労働することは不可能。自宅で生活できて、看護はほとんど個人的な要求によるものである。様々な程度の介助を必要とする | 70 | 自分自身の世話はできるが、正常の活動・労働することは不可能 |
60 | 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要 | |
50 | 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要 | |
身の回りのことを自分できない。施設あるいは病院の看護と同等の看護を必要とする。疾患が急速に進行している可能性がある | 40 | 動けず、適切な医療および看護が必要 |
30 | 全く動けず、入院が必要だが死はさしせまっていない | |
20 | 非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要 | |
10 | 死期が切迫している | |
0 | 死 |
WHO パフォーマンスステータス
スコア | 患者の状態 |
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0 | 全く問題なく活動できる。発病前と同じ日常生活が制限無く行える |
1 | 肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。たとえば、軽い家事、事務など |
2 | 歩行可能で、自分の身の回りのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす |
3 | 限られた身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす |
4 | 全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。完全にベッドか椅子で過ごす |
5 | 死亡 |
出典:国立がん研究センター東病院「患者さん向け治験情報」より
治験情報に関する注意点
治験は、治療を兼ねた臨床試験のことです。薬の元となる物質を動物実験などで有効性や安全性を確認した上で、ヒトに対して使用しても同様に安全で治療効果が予測されるもので行われますが、治験の時点ではまだ有効性や安全性が十分に確認できているわけではありません。有効性や安全性が科学的に証明された治療が、標準治療で、新しい治療が必ずしも最良の治療ではないということを理解してください。その一方で標準治療が確立していない、または薬の耐性ができ、効果が期待できる薬がなくなった患者さんにとって治験は新しい治療選択となる可能性もあります。
治験は「ヘルシンキ宣言」に基づく倫理的原則と、「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」を遵守して行われています。治験実施にあたり、日本では「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)」という厳しいルールが定められています。これにより、治験に参加される方の利益が損なわれることがないよう、安全な手続きで治験は進められます。
治験情報を探すとき、治験を受けたいと思ったときは、まず治験とはどのようなものなのかを理解してください。
がんの治験情報をお探しの方に知ってほしい5つのこと
※ここに掲載した多くの情報は、JAPIC-CTIやUMIN-CTRに登録された情報を元にし、一般の人でもわかりやすく解説しています。
試験概要詳細
試験の名称 | キナーゼ阻害薬治療歴のない腫瘍増悪が認められる RET 遺伝子変異陽性の進行甲状腺髄様癌を有する患者を対象として selpercatinib を医師選択治療(cabozantinib 又はバンデタニブ)と比較する多施設共同、無作為化、非盲検、第III 相試験(LIBRETTO-531) |
試験の概要 | キナーゼ阻害薬の治療歴のない腫瘍増悪が認められるRET遺伝子変異陽性の進行MTCを有する被験者集団におけるTFFSを、selpercatinib投与例とcabozantinib又はバンデタニブ投与例との間で比較すること |
疾患名 | 甲状腺髄様癌 |
試験薬剤名 | セルペルカチニブ |
用法・用量 | 経口投与 |
対照薬剤名 | バンデタニブ |
用法・用量 | 経口投与 |
試験のフェーズ | フェーズ3/phase3 |
試験のデザイン | 国際多施設共同、無作為化、非盲検、実薬対照、第3相試験 |
目標症例数 | 400 |
適格基準 |
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除外基準 |
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主要な評価項目 | 有効性/efficacy |
主要な評価方法 | BICRが判定するtreatment failure-free survival(TFFS) |
副次的な評価項目 | 有効性/efficacy |
副次的な評価方法 | BICRが判定するPFS BICRが判定するORR/DOR OS 治験責任(分担)医師が判定するPFS2 |
予定試験期間 | 2020年3月26日~2024年12月16日 |