食道がん、転移リンパ節の縮小率測定が予後・再発予測に役立つことが明らかに

2019/07/26

文:がん+編集部

 食道がんにおいて、化学療法前後のCT検査で転移リンパ節の縮小率を比較することが、術後の再発や予後を最も正確に予測できることを発表されました。

原発巣60%未満、転移リンパ節30%未満を境に予後が最も大きく異なる

 大阪大学は7月8日、食道がんの術前化学療法前後にCT検査を行なうことで、転移リンパ節への治療効果が、術後の再発や予後を最も正確に予測できることを発表しました。同大学大学院医学性研究科大学院生の浦川真哉氏、牧野知紀助教、土岐祐一郎教授らの研究グループによる成果です。

 食道がんは臓器の形態上、原発巣の腫瘍サイズの測定が難しいため、研究グループはCT検査で腫瘍サイズの測定が可能な転移リンパ節に着目。転移リンパ節の縮小率を用いて、食道がんの予後や再発形式を評価しました。その結果、より正確に術後の予後予測が可能になることが明らかになりました。

 研究グループは、胸部食道がん患者さん251人を対象に抗がん剤治療前後でCT検査を行ないました。抗がん剤治療前にリンパ節転移ありと診断、他臓器にがんが広がっていない、抗がん剤治療後に根治手術を施行、という条件に当てはまる患者さんです。その検査結果を解析したところ、抗がん剤治療前後で原発巣サイズ、転移リンパ節サイズともに明らかに縮小しており、化学療法によるがんの縮小が確認されました。さらに、原発巣と転移リンパ節のがんの縮小率と予後の関係を解析したところ、それぞれ縮小率60%、30%を境に予後が最も大きく分かれることも判明しました。

 転移リンパ節が30%以上縮小した患者さんは、30%未満の患者さんと比較して、生存率が明らかによいという結果でした。また、原発巣と転移リンパ節のサイズ変による予後評価を比較したところ、転移リンパ節でのサイズ変化での評価の方が顕著に生存率を反映していました。さらに、術後再発に関して検討した結果、原発巣で60%未満・転移リンパ節で30%未満と術前化学療法で縮小率が低かった群は、縮小した群と比べてリンパ行性や血行性(肺、肝臓、骨など)の再発頻度が高くなっていました。その傾向は原発巣よりも転移リンパ節で顕著でした。これらのことから、CT検査による転移リンパ節縮小率30%の指標を用いることは、食道がんの治療効果予測や再発・予後予測においてもっとも優れていることが示されました。

 本研究の成果を踏まえ、「化学療法前後で原発巣が治療効果ありとされても、転移リンパ節の治療効果が乏しいケースではリンパ行性や血行性再発が明らかに多く予後が悪いため、別メニューの化学療法や放射線療法を行うなどオーダーメイド治療の確立に大きく貢献し、最終的に食道がん全体の治療成績の改善につながるものと期待されます」と、研究グループは述べています。