再発・難治性の多発性骨髄腫の最新治療「E-Pd療法とは」-プレスセミナー開催
2019/12/18
文:がん+編集部
再発・難治性の多発性骨髄腫の新たな治療選択として、エロツズマブ(製品名:エムプリシティ)、ポマリドミド(製品名:ポマリスト)、デキサメタゾンの3剤を併用する療法(E-Pd療法)の一部変更承認を受け、プレスセミナーが開催されました。
ELOQUENT-3試験では、病勢進行または死亡リスクを46%減少
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は12月13日、「再発・難治性の多発性骨髄腫の最新治療」と題したプレスセミナーを開催。日本赤十字社医療センター骨髄腫アミロイドーシスセンター長の鈴木憲史先生による講演が行われました。
国立がん研究センターのがん統計の全国推計によると、2015年に多発性骨髄腫と診断された人は、男性3,736人女性3,394人、合計7,130人です。高齢者に多い病気なので、高齢者が増えている日本では増加しています。かつては人口10万人当たり3人ほどでしたが、現在は10万人あたり約6人と増加傾向にあります。
多発性骨髄腫は形質細胞ががん化する病気で、高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変などの症状が起きる病気です。赤血球、血小板、白血球など血液を構成する細胞のうちの白血球の1つであるB細胞から分化して作られる形質細胞ががん化することで起こります。形質細胞ががん化してできた骨髄腫細胞は、骨髄内で異常に増殖するため、正常な造血機能が抑えられてしまいます。そのため、赤血球が不足して貧血が起き、白血球が不足して感染症が起こり、また、血小板の不足は出血につながるなど、さまざまな症状が起きます。
多発性骨髄腫は、進行するまで自覚症状が現れることが少なく、早期診断が難しいといわれています。新規治療薬の登場で、初発のみならず、再発または難治性の多発性骨髄腫でも治療成績が向上していますが、まだ寛解を維持することは難しく、再発・再燃を繰り返される患者さんも多くいます。
今回新たに、エロツズマブを、ポマリドミドとデキサメタゾン併用療法に加えた「E-Pd療法」が、再発または難治性の多発性骨髄腫を適応として承認されました。これは、国際共同ランダム化第2相臨床試験ELOQUENT-3試験に基づく承認です。
ELOQUENT-3試験では、E-Pd療法と、ポマリドミド+デキサメタゾン2剤併用療法(Pd療法)を比較。その結果、E-Pd療法の患者群は、Pd療法と比較して、病勢進行または死亡リスクが46%減少(無増悪生存期間中央値:10.3か月/4.7か月)。奏効率はPd療法に比べE-Pd療法は2倍以上、全生存期間でも46%の死亡リスクの改善が認められました。
エロツズマブは、SLAMF7と選択的に結合するヒト化IgG1モノクローナル抗体薬。骨髄腫の細胞膜上にあるSLAMF7と結合し、NK細胞との相互作用による抗体依存性細胞障害により、骨髄腫細胞の増殖を抑制します。2016年以降に発売された新規薬剤では初となるPd療法との併用により、今まで治療選択肢がなかった多発性骨髄腫患者さんに対して、エロツズマブは新たな治療選択肢となります。
鈴木憲史先生は、再発・難治性の多発性骨髄腫の将来の治療に関して、次のように述べました。
「再発・難治性の多発性骨髄腫の治療では、Pd療法も有効ですが、エロツズマブと併用することでより効果が得られるようになりました。いままで治らないと思っていた病気でも、治癒する患者さんもでてきました。こうした治癒を目指すためには、最初にしっかりとした治療を行い、その後免疫の力を使い3~5年で治療をやめることです。将来的には、最初にコンパニオン診断を行い、患者さんの遺伝子を確認して個別に治療選択をすることが大切です」