日本人の家族性膵臓がんの関連遺伝子を解明

文:がん+編集部

 日本人の家族性膵臓がんの関連遺伝子が明らかになりました。原因遺伝子によっては、がん遺伝子検査を行うことで治療選択に有益な情報が得られる可能性があります。

家族性膵臓がんでは定期的な検査推奨、遺伝子パネル検査によって有益情報が得られる可能性

 大阪大学大学院医学系研究科は8月8日、日本人における家族性膵臓がんの関連遺伝子を特定したと発表しました。同大の谷内田真一教授、東北大学大学院医学系研究科の古川徹教授、国立がん研究センター、東京女子医科大学、杏林大学、みずほ情報総研株式会社の研究グループによるものです。

 欧米では家族性膵臓がんの登録と追跡調査により、関連遺伝子の同定が行われてきましたが、日本を含むアジアでは関連遺伝子の網羅的な解析は行われていませんでした。研究グループは、家族性膵臓がん患者さん81人を対象に解析を行い、日本人における関連遺伝子がATM、BRCA2、MLH1、MSH2、MSH6、PALB2、BRCA1、TP53であることを解明しました。また、81人中2人以上で、新規の関連候補遺伝子としてASXL1、ERCC4、TSC2、FAT1やFAT4が認められました。

 今回解明された遺伝子のうち、BRCA1/2やPALB2遺伝子変異は、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因遺伝子で、治療薬としてPARP阻害薬オラパリブ(製品名:リムパーザ)が承認※されています。家族性膵臓がんにおいて、日本でも原因遺伝子によっては、がん遺伝子検査を行うことで治療選択に有益な情報が得られる可能性があります。

 谷内田真一教授は、次のように述べています。

 「アンジェリーナ・ジョリーさんの予防的乳房切除術で遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)が広く世間に知られるようになりました。膵臓がんにおいても5〜10%は家族性と考えられています。しかし家族歴のある患者においても、その原因となり得る関連遺伝子がみつかるのは、欧米のデータと同様に約20%です。依然として不明なことが多いのが現状だと思います。家族性膵臓がんの存在を啓蒙して、今後、家族性膵臓がんに関する研究を加速し、その全容解明を行い、診断や治療に結びつけたいと考えています」

※効能・効果は 、「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんにおける初回化学療法後の維持療法」「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」です。