抗がん剤治療後の骨髄中に残った白血病細胞、エネルギーを得るメカニズムを解明

文:がん+編集部

 抗がん剤治療後の骨髄中に残った白血病細胞が、エネルギーを得るメカニズムが解明されました。抗がん剤治療後の再発を防ぐ治療法の開発が期待されます。

抗がん剤治療後の白血病の再発を防ぐ治療法の開発に期待

 順天堂大学は9月14日、抗がん剤治療後に骨髄の中に残存する白血病細胞がエネルギーを得る仕組みを明らかにしたことを発表しました。同大大学院医学研究科・臨床病態検査医学の田部陽子教授、齋藤香里研究員らと米国MD AndersonがんセンターのMarina Konopleva教授らとの国際共同研究によるものです。

 白血病細胞は、細胞内のミトコンドリアの呼吸によって生存に必要なエネルギーを得ています。そのため、ミトコンドリアの呼吸を阻害する治療が考えられますが、白血病細胞は周囲にある間質細胞との相互作用により生き残り、再発の原因になるという課題がありました。

 研究グループは、白血病細胞がミトコンドリアの呼吸を阻害された際に、周囲の細胞にどのように働きかけ、そのような仕組みで機能を維持しエネルギーを得ているかを調べました。まず、以前の研究で見出したミトコンドリアの呼吸を阻害する薬剤を使用して、間質細胞と共培養した白血病細胞の酸素消費率や細胞死の変化を調べ、イメージング解析を行いました。また、マウスを使った実験で、生体内での白血病細胞の遺伝子発現の変化も調べた結果、ミトコンドリア呼吸を阻害された白血病細胞は、突起を出しながら骨髄間質細胞に向かって移動し、トンネル状の微小管の突起を形状し、これを介して間質細胞からミトコンドリアを受け取るという現象を発見しました。また、この現象と同時に白血病細胞内ではミトコンドリアの分裂が進み、機能の衰えたミトコンドリアが排除される様子が観察されました。さらにこの現象は、ミトコンドリア呼吸の阻害によってのみ起こるものではなく、一般的に使用される白血病治療薬によって骨髄間質細胞から白血病細胞へのミトコンドリアの移動がさらに増加することもわかりました。

 このことから、エネルギーが欠乏した白血病細胞は、周囲の細胞から直接ミトコンドリアを受け取るとともに、自身のミトコンドリアの分裂を促進させて機能を高めることにより生存に必要なエネルギーを作り出すことがわかりました。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「本研究により、今まで不明であった白血病細胞が抗がん剤から生き残る仕組みを明らかにしました。白血病細胞は、骨髄微小環境内の白血病細胞が周囲の細胞から直接的にミトコンドリアを受け取り、また、自らのミトコンドリアの分裂能を高めることによってミトコンドリア呼吸の阻害に抵抗性を強め、生存に必要なエネルギーを得ていることから、腫瘍細胞が周囲の細胞を利用してエネルギー枯渇を代償するプロセスを阻止することで、様々な治療薬の抗腫瘍効力を高める効果があると考えられます。本成果は、白血病の再発防止の治療法の開発のみならず、今後のがん代謝制御治療に役立つことが期待されます」