がん免疫療法に伴う高血圧のリスクを検証

2022/10/26

文:がん+編集部

 免疫チェックポイント阻害薬による治療では、短期的には血圧が上昇しないことが証明されました。

免疫チェックポイント阻害薬による治療、短期的には血圧が上昇しないことを証明

 横浜市立大学は2022年9月26日、免疫チェックポイント阻害薬を開始しても、短期的には血圧が上昇しないという研究成果を発表しました。同大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学の峯岸 慎太郎助教、金口 翔助教らの研究グループによるものです。

 有効ながん治療法が開発され、がん患者さんの予後は改善傾向にあり、一部のがんでは、再発より心血管疾患などによる死亡が多くなってきています。

 免疫チェックポイント阻害薬は、その臨床的有用性にもかかわらず、様々な臓器症状を伴う免疫関連有害事象として知られる独特の副作用を引き起こすことがあります。心筋炎、不整脈、伝導異常、心膜疾患、たこつぼ心筋症などの免疫チェックポイント阻害薬に関連した心毒性は、がん患者さんにとって深刻かつ生命を脅かす可能性のある有害事象です。免疫チェックポイント阻害薬の使用で、心血管疾患のリスクが増加することも報告されていますが、高血圧との関連については、ほとんどわかっていませんでした。

 研究グループは、免疫チェックポイント阻害薬と高血圧の関係を調べるため、少なくとも1種類の免疫チェックポイント阻害薬と他のがん治療薬を併用し、対照群との比較を行っているランダム化比較試験(32件、1万9,810人)を選択して解析を実施。

 解析の結果、免疫チェックポイント阻害薬開始は高血圧と有意な関連は認めませんでした。さらに、製剤別、併用薬、試験デザインにおけるサブ解析を実施。抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体で、グループ間に差は見られず、抗血管内皮増殖因子製剤を含むさまざまな薬剤との免疫チェックポイント阻害薬併用療法では、高血圧リスクに有意差は認めませんでした。試験デザインに基づくサブグループ解析では、得られた結果に不一致があり、非プラセボランダム化比較試験ではプラセボランダム化比較試験よりも高血圧の発症リスクが高いという結果が得られました。

 研究グループは今後の展開として、次のように述べています。

 「本研究成果により、免疫チェックポイント阻害薬はがん患者における短期的な高血圧のリスクを増加させないことが証明されました。高血圧とがんの関連、血圧を上昇させるがん関連因子、薬剤とがんリスクなど、複雑なメカニズムに対処していくためには、多職種による学際的な協力が重要です。本研究グループは、”Onco-Hypertension”という新しいコンセプトに基づき、多方面からエビデンスの構築を行い、がん患者の管理を最適化し、予後を改善することを目標としています」