がんになると瘦せる「がん悪液質」のメカニズムを解明

2022/11/21

文:がん+編集部

 がんになると瘦せる「がん悪液質」のメカニズムが解明されました。がん由来の細胞外小胞を標的としたがん支持療法の開発につながることが期待されます。

がん由来の細胞外小胞を標的としたがん支持療法の開発につながることが期待

 東京大学は2022年10月31日、膵臓がん由来の細胞外小胞が脂肪分解を引き起こすメカニズムを解明したことを発表しました。同大学医学部附属病院消化器内科の柴田智華子医病院診療医、大塚基之講師、藤城光弘教授らの研究グループによるものです。

 進行がんの患者さんでは、全身の脂肪や筋肉が萎縮して体重が極端に減少する「悪液質」の症候がしばしば見られます。膵臓がんでは、まだ病変が局所にとどまっているうちから体重減少が起こることが知られていますが、そのメカニズムは十分には解明されていませんでした。

 研究グループは、局所にとどまるがん病巣から血中に放出された細胞外小胞が全身の脂肪細胞に働いて脂肪分解や体重減少を起こすのではないかと仮説を立てて検討。本研究では、不均一な集団である血中の細胞外小胞群の中から、膵臓がん由来と考えられる細胞外小胞だけを単離して解析する方法を新たに確立し、解析を行いました。

 その結果、膵臓がん由来の細胞外小胞には脂肪細胞との接着に重要な接着因子が高発現しており、脂肪細胞に接着した細胞外小胞が脂肪細胞内に取り込まれた結果、脂肪分解が起きることをみいだしました。

 今回の研究成果は、がん由来の細胞外小胞を標的としたがん支持療法の開発につながることが期待されます。

 研究グループは社会的意義と今後の展開として、次のように述べています。

 「膵がん由来の細胞外小胞の表面にITGB1とITGA6が高発現していることが脂肪分解惹起に重要であることが示されるとともに、がん由来の細胞外小胞のみを特異的に単離して解析すると、不均一な細胞外小胞集団を一括解析するだけでは分からなかった精緻な結果が得られることが示されました。今後、このような特異的な細胞外小胞の単離解析とそこへの介入法開発を進めることで、病態に関わる新たな知見の取得や新たな治療法の創生につながる可能性があると研究グループは考えています」