エンハーツ、HER2低発現の乳がんの治療薬としてCHMPが肯定的見解を示す

2023/01/16

文:がん+編集部

 トラスツズマブ デルクステカン(製品名:エンハーツ)、HER2低発現の手術不能または転移性乳がんの治療薬として、欧州医薬品庁の医薬品委員会(CHMP)が承認を推奨する肯定的見解を示しました。

エンハーツ、HR陽性乳がんに対し化学療法と比較して病勢進行または死亡リスクを49%低下

 第一三共株式会社とアストラゼネカは2022年12月19日、トラスツズマブ デルクステカンについて、HER2低発現の手術不能または転移性乳がんの治療薬として、CHMPから承認を推奨する肯定的見解が示されたことを発表しました。今回の承認申請は、DESTINY-Breast04試験の結果に基づくものです。

 DESTINY-Breast04試験は、転移再発で化学療法を受けたHER2低発現の手術不能または転移性乳がん患者さんを対象に、トラスツズマブ デルクステカンと化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ナブパクリタキセルのいずれか)を比較した第3相試験です。主要評価項目は、盲検化独立中央評価委員会による無増悪生存期間、主な副次的評価項目は、治験責任医師による無増悪生存期間、全生存期間、客観的奏効率などでした。

 ホルモン受容体(HR)陽性の患者さんに対する解析では、トラスツズマブ デルクステカンは化学療法と比較して病勢進行または死亡リスクを49%低下しました。それぞれの無増悪生存期間の中央値は10.1か月と5.4か月でした。全生存期間の中央値は、それぞれ23.9か月と17.5か月でした。

 全患者さんに対する無増悪生存期間の中央値は、トラスツズマブ デルクステカンが9.9か月、化学療法が5.1か月で、病勢進行または死亡リスクを50%低下しました。全生存期間の中央値は、それぞれ23.4か月と16.8か月でした。

 安全性に関しては、グレード3以上の有害事象は、トラスツズマブ デルクステカンを投与された患者さんの52.6%、化学療法を受けた患者さんの67.4%で認められました。また、トラスツズマブ デルクステカンを投与された患者さんの12.1%で、治療に関連した間質性肺疾患または肺炎が認められ、0.8%にグレード5の有害事象が認められました。