前立腺がんの術後合併症「尿失禁」、再生医療で克服を目指す臨床試験を国がん東病院が開始

2023/09/29

文:がん+編集部

 自己脂肪組織由来の培養脂肪幹細胞を用い、再生医療で外尿道括約筋の機能再建を目指す臨床試験を国立がん研究センター東病院が開始しました。前立腺がんの術後合併症である尿失禁の改善を目的としています。

患者さんの皮下脂肪から「脂肪幹細胞」を分離培養、尿失禁の原因となっている外尿道括約筋に注入

 国立がん研究センターは2023年8月31日、前立腺がんの根治的前立腺全摘後に合併症として発症する腹圧性尿失禁に対する再生医療を用いた臨床試験を同研究センター東病院が開始したことを発表しました。

 尿失禁は、前立腺全摘後に多くの患者さんでみられ、体操と服薬により約9割の患者さんでは改善しますが、約1割の患者さんでは改善が乏しく、その場合に有効な治療法はないことから新たな治療法の開発が課題となっています。

 今回開始された臨床試験では、尿失禁の改善が乏しい患者さんに、患者さんの皮下脂肪からさまざまな細胞に分化する能力を保持している幹細胞「脂肪幹細胞」を分離培養し、尿失禁の原因となっている外尿道括約筋に注入することで、機能の向上と症状の改善、安全性について注入後1年間にわたり検証が行われます。目標症例数は10例、予定期間は2025年5月まで行われる予定です