「造血幹細胞移植の最新動向と、移植後の健康問題」について、プレスセミナー開催

2024/06/14

文:がん+編集部

 造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)に対する治療薬として、選択的ROCK2阻害薬「ベルモスジルメシル(製品名:レズロック)」が発売。「造血幹細胞移植の最新動向と、移植後の健康問題」と題したプレスセミナーが開催されました。

レズロック、造血幹細胞移植後の慢性GVHDに対する選択的ROCK2阻害薬

 Meiji Seika ファルマ株式会社は2024年6月6日、「造血幹細胞移植の最新動向と、移植後の健康問題」と題したプレスセミナーを開催し、同社取締役社長の小林大吉郎氏、取締役専務執行役員研究開発本部長の黒沢亨氏、北海道大学大学院医学研究院血液内科の豊嶋崇徳卓越教授、慢性GVHD患者の木崎俊明氏が登壇しました。

 最初に登壇した小林氏は、同社の血液内科領域における取り組みを発表。併せてレズロックへの期待として、次のように述べました。

 「標準治療法が確立されていない慢性GVHDの2次治療に対して、新たな治療選択肢を提供することで、個々の患者様により適切な治療法を選択いただけるようになります。また、新たな作用機序であるレズロックの有効性・安全性データなどの科学的知見の集積が、慢性GVHDの原因や病態などの解明、効果的な治療法の開発につながると期待されます」

 次に、豊嶋卓越教授より、「造血幹細胞移植の最新動向と移植後の健康問題」に関しての講演が行われました。

 「造血幹細胞移植は、抗がん剤など他の治療法で治癒が期待できない場合の最後の砦となる治療です。しかし、ドナーの免疫細胞が患者さんの体と白血病細胞を非自己と認識して攻撃してしまうため、造血幹細胞移植後には、GVHD予防のため免疫抑制剤を投与しますが、完全には防げず、約3分の1の患者さんでは慢性GVHDを発症します。副腎皮質ステロイドによる治療が行われますが、約半数の患者さんでは効果が不十分で、そうした患者さんに対する治療薬がありませんでした。ステロイド無効の場合の2次治療薬として2021年にイブルチニブ、2023年にルキソリチニブ、2024年にベルモスジルメシルが発売されました。ベルモスジルメシルは、慢性GVHDの治療を妨げる最大の原因である血球減少や免疫不全がマイルドなため、じっくりと長期的な使用が期待できます。また、それぞれの治療薬は、作用機序が異なるため患者さんの病態に応じて使い分けることが重要です」

 続いて登壇した黒沢氏からは、慢性GVHD患者さんを対象にベルモスジルメシルを評価した第3相ME3208-2試験に関する解説が行われました。

 「レズロックは、T細胞分化と組織繊維化に関わるROCK2を選択的に阻害することで、慢性GVHDの症状を改善します。ME3208-2試験では、ステロイド依存性または抵抗性の慢性GVHDに対する有効性と安全性が確認されました。レズロック投与に伴う血球減少はなく、重篤な感染症の発生は肺炎が1例のみでした。レズロックは、慢性GVHDの2次治療における新たな治療選択肢になると考えられます」

 最後に登壇した木崎氏からは、「造血幹細胞移植を受けて感じたこと」について自身の経験が語られました。

 「2020年6月に急性骨髄性白血病と診断されました。化学療法中は、倦怠感、吐き気、食欲不振などで10キロ以上体重も減少しましたが、同年8月に寛解しました。寛解しましたが、予後不良なタイプと言われ造血幹細胞移植を勧められました。移植に対する不安はありましたが、家族や友人からの応援もあり1回だけ移植を受けることを決めました。同年9月に無事生着し移植は成功しましたが、急性GVHDとなってしまいました。それでも免疫抑制剤の治療を受けることで、同年12月に退院することができました。退院後は徐々に免疫抑制剤を減量していきましたが、今度は慢性GVHDを発症。2022年8月から免疫抑制剤を増量することで症状は抑えられてきましたが、免疫抑制剤の副作用QOLが低下しました。このとき、慢性GVHDの症状で苦しむか、免疫抑制剤の副作用で苦しむかこの2択しかなく、希望はありませんでした。移植後3年経過した今も、1日17錠の飲み薬と4種類の塗り薬のおかげで、普通の生活を送れるほどのQOLを取り戻すことができました。こうした経験から、このような情報やサポートがあれば、移植を受ける患者さんがQOLを取り戻しやすくなるのではないかと考えています。私と同じような患者さんが、少しでも元気を取り戻せるようなサービスやサポートが開発され、提供されることを願っています」