「肝がんの今~生活習慣を見直せば、肝がんは防げる」メディアセミナーレポート
2024/07/25
文:がん+編集部
「肝がんの今~生活習慣を見直せば、肝がんは防げる」と題したメディアセミナーが開催されました。
肝がんの治療と副作用の課題、治療中の症状を患者さんが医療従事者に十分に伝えられていないことが判明
アストラゼネカ株式会社は2024年7月17日、「肝がんの今~生活習慣を見直せば、肝がんは防げる」と題したメディアセミナーを開催。国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科長の奥坂拓志先生による講演と同薬剤部の寺田公介先生を交えたパネルディスカッションが行われました。
まず、「肝がんを知る~患者調査結果からみる最新動向と予防・治療の現状~」をテーマに、奥坂先生が肝がんの早期発見や治療についての現状と、患者調査から見えてきた課題について解説されました。
「ALT>30」を指標にかかりつけ医の受診を
「ウイルス性肝疾患の制御により肝臓がんは減少傾向にありますが、非ウイルス性の肝臓がんは増加傾向にあります。そのため、生活習慣の改善が重要です。また、肝障害の状態を反映するALT値を調べる検診を少なくとも1年に1回受けることで、肝臓がんの早期発見につながります。ALTは、肝細胞が傷つくと細胞内から血液中に漏れ出てきます。ALT値が30を超えると肝障害が起こっている可能性が高くなりますので、まずはかかりつけ医を受診することが大切です」
治療では副作用や合併症を管理し、生活の質の向上を目指す
「肝臓がんに対しては多くの治療法が開発されており、より早期に治療を開始したほうが予後は良好です。治療にあたっては、副作用や合併症の管理による生活の質の向上を目指すことも重要です」
薬物治療中、何か症状があっても「次の診療日を待って伝える」が7割
最後に奥坂先生は、同社が行った患者調査「肝細胞がん患者調査レポート」の結果を用いて、次のように治療と副作用のマネジメントの重要性を解説しました。
「治療中の症状の経験とその症状を医療従事者に伝えたか(薬物治療経験者)という質問では、経験した全ての患者さんが医療従事者にその症状を伝えていましたが、そのうちの72%の患者さんでは、『次の診療日を待って通院した際に伝えた』と回答しました」
「症状があった際に電話で連絡しなかった理由についての質問では、『我慢できる範囲だと思ったから』が57%と最も多く、次いで『急いで報告すべき体調の変化や症状だとは思わなかったから』 が51%、『肝細胞がんの治療に伴う体調への影響(副作用など)かどうかわからなかったから』が29%でした」
「免疫チェックポイント阻害剤などの新しい薬物治療では、ささいな症状でも早期に把握し対策をしなければ、治療の休止や中止につながります。今回の患者調査では、治療中の症状を患者さんが医療従事者に十分に伝えられていないという実態が明らかとなり、副作用対策に課題が存在することが示唆されました」
パネルディスカッション「変わってきた肝がんにどう立ち向かうか」
講演後のパネルディスカッション「変わってきた肝がんにどう立ち向かうか」の中で、奥坂先生と寺田公介先生は次のように話されました。
奥坂先生「患者調査の結果から、治療中に症状があっても医療従事者には連絡しづらいという実態がわかります。症状があった際に電話で連絡しなかった理由として、『肝細胞がんの治療に伴う体調への影響(副作用など)かどうかわからなかったから』という患者さんが29%でした。こういう患者さんの中には、薬物治療による副作用が隠れている可能性が高いので、連絡してもらえるようにすることが大切だと思っています。また、『電話で連絡するように言われていなかったから』『電話しても具体的に誰を呼び出してもらってどのように説明すれば良いのかがわからなかった』という患者さんが6%とわずかですがいらっしゃいました。こうした患者さんに対しては、医療者側にも、やれることはあるのではないかと考えています」
寺田先生「医師の短い診療時間の中では、細かい症状まではなかなか伝えられないかもしれません。その場合は、薬剤師、看護師、事務スタッフなどでも良いので相談していただきたいと思います。当院では、ホットラインというものを設けています。外来化学療法を受けている患者さん専用のいつでも電話で相談できる窓口です。例えば、風邪を引いたから風邪薬を飲んでも良いのかという相談でもいいです。こうした相談をきっかけに、大丈夫かどうか病院に行った方が良いかなどを判断することができます」