切除可能な進行食道がんの術前化学療法として3つの治療を比較した臨床試験の結果を発表

2024/08/16

文:がん+編集部

 切除可能な進行食道がんの術前化学療法として、CF療法(シスプラチン+5-FU)、DCF療法(ドセタキセル+シスプラチン+5-FU)、化学放射線治療(シスプラチン+5-FU+放射線療法41.4Gy)の3つの治療を比較した臨床試験の結果を発表。DCF療法の有効性が認められました。

DCF療法はCF療法と比較し死亡リスク34%減少、切除可能な進行食道がんへの術前DCF療法が日本の新たな標準治療に

 国立がん研究センターは2024年6月27日、切除可能な進行食道がんの術前化学療法として3つの治療を比較したJCOG1109試験の結果を発表しました。

 JCOG1109試験は、ステージ1B~3(深達度T4除く)の切除可能な食道がん患者さん601人を対象に、術前化学療法として、日本の標準治療であるCF療法、より強力な抗がん剤をCF療法に加えたDCF療法、欧米の標準治療であるCF+RT療法を比較した第3相試験です。主要評価項目は全生存期間、副次的評価項目は無増悪生存期間、奏効割合、完全奏効割合、有害事象発生割合などでした。

 試験の結果、DCF療法はCF療法と比較して死亡リスクを34%減少し、統計学的有意な全生存期間の延長が認められました。CF療法、DCF療法、CF+RT療法の全生存期間の中央値は、それぞれ5.6年、未達(多くの患者さんが生存)、7.0年でした。また、CF+RT療法はCF療法と比較して有意性が認められませんでした。3年後の生存割合は、CF療法62.6%、DCF療法群72.1%、CF+RT療法68.3%でした。

 術前治療に関連した副作用については、重篤な好中球減少がCF療法23.4%、DCF療法85.2%、CF+RT療法44.5%でした。発熱性好中球減少症は、CF療法群1.0%、DCF療法16.3%、CF+RT療法4.7%と、以前の報告と同様でした。

 術後の合併症に関しては、肺炎がCF療法10.3%、DCF療法9.8%、CF+RT療法12.9%、吻合部漏出がCF療法10.3%、DCF療法8.7%、CF+RT療法2.4%、反回神経麻痺がCF療法15.1%、DCF療法10.4%、CF+RT療法9.6%でした。

 治療関連死はCF療法2%、DCF療法2%、CF+RT療法1%と、いずれも大きな違いは見られず3治療とも安全性は許容範囲と考えられました。

 ただし、術前DCF療法に関しては、重大な副作用である発熱性好中球減少症が他の治療に比べやや多く、特に高齢な患者さんや臓器機能に問題がある患者さんに強く副作用が出ることがわかっています。

 同研究センターは展望として、次のように述べています。

 「本試験の結果より、切除可能な進行食道がん(扁平上皮がん、類基底細胞がん、腺扁平上皮がん)患者さんでの術前化学療法は、術前DCF療法が最も生存期間延長効果を期待できる治療で、従来の術前CF療法に替わり標準治療となります。ただし、食道がんの治療では、食事への影響、抗がん剤や手術に伴う副作用、再発の可能性などさまざまな考慮すべきことがあり、治療法の利点と欠点について、個々の患者さんがよく説明を受けた上で決めることも重要です」