肝細胞がん患者さん対象、治療の種類や治療中の体調変化に対する行動などについての調査結果を発表

2024/09/19

文:がん+編集部

 肝細胞がん患者さんを対象に、治療の種類や治療中の体調変化に対する行動などについて調べたインターネット調査において、生活習慣病に起因する肝細胞がんは、ウイルス性肝炎に起因する肝細胞がんと比較して、より進行度の高い状態で発見されている可能性が示唆されました。

生活習慣病が起因の肝細胞がん、ウイルス性肝炎が起因の場合と比較してより進行度の高い状態で発見されている可能性

 アストラゼネカ株式会社は2024年8月7日、肝細胞がんと診断されたことのある173人を対象に、治療の種類や治療中の体調変化に対する行動などについて調べるインターネット調査の結果を発表しました。

 日本人の肝臓がんの約90%は肝細胞がんで、主な原因はB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスの感染です。その他には多量飲酒によるアルコール性肝障害、メタボリックシンドロームに起因する非アルコール性脂肪肝炎などがあります。

 同社が2024年4~5月に実施したインターネット調査の結果、生活習慣病に起因する肝細胞がんは、ウイルス性肝炎(B型C型肝炎罹患歴を有する)に起因する肝細胞がんと比較して、初回治療の選択肢が少ないことや再発による次治療までの期間が短いことが明らかとなり、生活習慣病起因の肝細胞がん患者さんは進行度が高い状態で診断されていることが示唆されました。

主な調査結果は、以下の通りです。

肝細胞がんと診断された時期ごとに、B型C型肝炎の罹患歴がある患者さんの割合を比較したところ、2010年以前に診断された患者さんでは74%、2011年からは約半数に減少し2021年以降では26%となった

初回治療で「薬物治療」を受けた患者さんについて、B型C型肝炎罹患歴の有無で比較した場合、罹患歴のない患者さんの割合は罹患歴のある患者さんの約8倍(24%:3%)だった

初回治療から次治療までの期間は、B型C型肝炎の罹患歴がある患者さんより罹患歴のない患者さんの方が短かった(12.0か月:31.9か月)

肝細胞がん治療で何らかの症状を経験しても「次の診療日まで待って報告している」と回答した患者さんは64%で、迅速に報告をしなかった理由として最も多かったのは「我慢できる範囲だと思った」(57%)だった

 本調査の監修医師である国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科長の奥坂拓志先生は、次のように述べています。

 「生活習慣病が起因となる肝細胞がんが増えつつある中、今回の調査でも、B型C型肝炎罹患歴のない肝細胞がん患者さんの割合が増加していることが示されました。また、これらの患者さんは罹患歴を有する患者さんと比べて初回から薬物治療を受ける割合も多いことが明らかとなりました。薬物治療中の体調変化時の医療従事者とのコミュニケーションは、特に重要ですが、報告すべき症状やタイミングなどの解決すべき課題も示唆されました」