AIによる早期胃がんの高精度な自動検出法

2018/07/30

文:がん+編集部

 AIを用いた早期胃がんの高精度な自動検出法を確立したと発表されました。この自動検出法が実用化されれば、検診での胃がんの見逃しを減らすことができ、胃がんの早期発見、早期治療につながることが期待されます。

コンピュータが「がん」と判断し、実際に「がん」だった割合93.4%

GGN病変
画像はリリースより

 理化学研究所と国立がん研究センターは7月21日、人工知能(AI)による、早期胃がんの高精度な自動検出法を確立したと発表しました。

 早期胃がんには、自覚症状があまりありません。がんが進行して症状が現れた場合でも、胃炎や胃潰瘍の症状に似ていることから、がんだと分かったときには進行していることがあります。そのため、50歳以上を対象とした対策型胃がん検診の方法として、胃部X線検査(バリウム検査)のほかに、胃内視鏡検査が推奨されています。しかし、早期胃がんの画像診断の正確さは医師の経験に依存し、専門医であっても発見が難しい場合があります。

 今回、研究グループは、ディープラーニングという機械学習の方法を使って、内視鏡画像から早期胃がんを自動検出する方法を考案しました。ディープラーニングを画像中の物体検出へ応用する場合、数十~数百万枚の正解画像が学習用データとして必要ですが、早期胃がんの場合、質の良い正解画像を大量に収集することは困難です。そこで、研究グループは、少数の正解画像から小さな領域をランダムに切り出すなどして画像を約36万枚まで増やしました。

 約36万枚の画像をコンピュータに学習させた結果、コンピュータが「がん」と判断した画像中、実際に「がん」だった割合は93.4%、コンピュータが「正常」と判断した画像中、実際に「正常」だった割合は83.6%で、胃炎や胃潰瘍と特徴が似ているために判断が難しい例についても、高い確率で判断できることがわかりました。また、早期胃がんの領域を高精度に自動検出することにも成功したそうです。

 研究グループは、「一般的に、機械学習の正解率は学習データの質と量によって決まるため、より多くの良質な情報を学習に利用すれば、さらなる正解率の向上が期待できます」と述べています。今回確立された自動検出法が実用化され、検診での胃がんの見逃しを減らすことができ、早期発見、早期治療につながることが期待されます。