がん化学療法の副作用、末梢神経障害に対する治験開始

2019/01/23

文:がん+編集部

 がん化学療法に伴う末梢神経障害に対する治験が開始されます。日本、韓国、台湾、香港を加えた国際共同臨床試験です。

白金製剤による末梢神経障害の改善に期待

 ソレイジア・ファーマ株式会社は2018年12月26日に、Calmangafodipir(製品名:PledOx)のがん化学療法に伴う末梢神経障害に対する、第3相臨床試験を日本で開始することを発表しました。

 今回の試験は、オキサリプラチンを含む mFOLFOX6による治療を受けた大腸がん患者さんを対象とした治験で、 POLAR-M試験 POLAR-A試験の2つで構成されています。POLAR-M試験は、mFOLFOX6療法を実施する遠隔転移がある大腸がん患者さんが対象で、POLAR-A試験は、術後補助化学療法としてmFOLFOX6療法を実施する大腸がん患者さんが対象です。どちらの試験も、Calmangafodipirの初回投与から9か月後に、中等度以上の慢性末梢神経障害が起こった患者さんの割合で評価されます。

 オキサリプラチンは白金製剤の1つで、重篤な副作用の1つが末梢神経障害です。末梢神経障害は、白金製剤、タキサン系、ビンカアルカロイド系、プロテアソーム阻害薬などでも起こることがあります。急性症状では、手、足、口唇周囲の感覚異常、呼吸困難や嚥下障害を伴う喉頭咽頭の絞扼感などがあります。慢性症状は、四肢抹消のしびれ、感覚低下、腱反射の低下、感覚性運動失調が起こります。現在、がん治療で行われる化学療法による末梢神経障害を効能・効果として承認された薬はありません。

 Calmangafodipirは、細胞内に発生した活性酸素を分解する酵素の類似物質で、神経細胞を薬物による酸化ストレスに起因する損傷から保護する作用があり、この作用により末梢神経障害を抑制すると考えられています。

POLAR-M試験

対象:mFOLFOX6療法を実施する大腸がん
条件:遠隔転移があるステージ4の患者
フェーズ:第3相臨床試験
試験デザイン:国際多施設共同、二重盲検、プラセボ対照
登録数:420人
試験群:Calmangafodipi
対照群:プラセボ
主要評価項目:中等度または重度の慢性のがん化学療法誘発性末梢神経障害
副次的評価項目:慢性のがん化学療法誘発性末梢神経障害、冷刺激に対する感受性,手足の痛みほか

POLAR-A試験

対象:術後化学療法としてmFOLFOX6療法を実施する大腸がん
条件:ステージ2、3の患者
フェーズ:第3相臨床試験
試験デザイン:国際多施設共同、二重盲検、プラセボ対照
登録数:280人
試験群:Calmangafodipi
対照群:プラセボ
主要評価項目:中等度または重度の慢性のがん化学療法誘発性末梢神経障害
副次的評価項目:慢性のがん化学療法誘発性末梢神経障害、冷刺激に対する感受性,手足の痛みほか