水虫治療薬、胆道がんの治療にも効く可能性

2019/05/08

文:がん+編集部

 白癬菌(水虫)の治療薬が、胆道がんに効く可能性を示す研究が発表されました。

今後、胆道がん患者さんに対して有効かの検証が必要

 慶應義塾大学は4月24日に、胆道がん患者さんから提供され培養したがん細胞を使って、薬物スクリーニングを行ったところ、白癬菌(水虫)などの真菌感染症に対する治療薬のアモロルフィンとフェンチコナゾールが胆道がんの新たな治療薬となる可能性があることを見出したと発表しました。慶應義塾大学薬学部薬物治療学講座の齋藤義正准教授らの研究グループによるものです。

 研究グループは、難治性がんの代表である胆道がん患者さんから提供されたがん細胞を、体外でがんの性質を保持したまま長期間培養することに成功しました。また、培養した細胞を遺伝子解析した結果を臨床データと組み合わせたところ、胆道がん患者さんの予後を予測する新たなバイオマーカーとしてSOX2、KLK6、CPB2を特定しました。さらに、東京大学創薬機構から提供された既存薬ライブラリーを使い、培養した細胞で薬物スクリーニングを行いました。その結果、ゲムシタビン(製品名:ジェムザール)をはじめとする抗がん剤は、予想通り効果を示しました。それに加えて、これまで抗腫瘍効果が報告されていなかった白癬菌(水虫)に対する治療薬のアモロルフィンとフェンチコナゾールも、効果がある化合物として選定された中に含まれていました。これらの薬の効果を、培養した複数の細胞を使って検証した結果、アモロルフィンとフェンチコナゾールが、胆道がんの増殖を抑制することが確認でき、特にアモロルフィンはゲムシタビンと同等の増殖抑制作用があることが明らかになりました。アモロルフィンとフェンチコナゾールは、市販品のため安全性も確認されており、胆道がんを最小限の副作用で効率的に抑制する新規予防・治療薬の候補になることが期待されます。

 研究グループは、今後の展開として、抗真菌薬であるアモロルフィンやフェンチコナゾールが実際の胆道がん患者さんに対して有効な治療薬となるかどうかを検証するための臨床試験の実施を目指し、さらに基礎的な研究を継続する予定だといいます。

 基礎研究と臨床試験との間のギャップを埋め、難治性がんおよび希少がんに対する治療薬候補の臨床試験への移行・承認を加速させると同時に、最適医療の基盤となるシステムが構築されることが期待されます。