HPV中咽頭がん、ゲノム・エピゲノム異常の全体像を解明

文:がん+編集部

 ヒトパピローマウイルス(HPV)による中咽頭がんの発生に関して、遺伝子レベルでメカニズムが解明されました。

HPV関連中咽頭がん治療の最適化の実現に期待

 東京大学は5月17日に、HPVによって引き起こされる中咽頭がんは、エピゲノム変化の標的が遺伝子の転写開始点にあることを解明したと発表しました。さらに、HPV関連中咽頭がんでは、高DNAメチル化腫瘍の一群が存在することを見出し、分子生物学的特性も明らかにしたそうです。東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の山岨達也教授、安藤瑞生講師、齊藤祐毅助教らの研究グループによるものです。

 HPV関連中咽頭がんは、飲酒や喫煙が原因とされる中咽頭がんとは性質が大きくことなることが、これまでの研究で明らかになっています。HPV関連中咽頭がんは、がん関連遺伝子変異などのゲノム異常は少ないのに、DNAメチル化などのエピゲノム異常が多くみられます。エピゲノムは、DNAの塩基配列を変えずに遺伝子の働きを決める遺伝情報の集まりです。塩基配列を変えずに、DNAメチル化やヒストン修飾といった化学修飾により、遺伝子の働きをコントロールします。エピゲノムは、遺伝子発現の制御に重要な役割を果たし、がんの発生においても重要なメカニズムと考えられています。

 研究グループは、HPV関連中咽頭がんの腫瘍組織47例、および健常者の中咽頭組織25例を対象として、次世代シーケンサーでゲノム・エピゲノムの統合的解析を行い、遺伝子変異解析、遺伝子発現解析、DNAメチル化解析を実施しました。さらに、ヒトの腫瘍組織をマウスに移植して増殖させる技術で、エピゲノム調節機構のひとつであるヒストン修飾も解析しました。解析の結果、転写開始点のDNAメチル化状態の変化が遺伝子発現と強く関連していることを突き止めました。さらに、DNAメチル化状態を指標にしてHPV関連中咽頭がん症例を解析した結果、患者さんの中に高メチル化腫瘍に分類される一群が存在することを同定しました。

 この成果は、HPV関連中咽頭がんの病態解明に貢献し、治療の最適化の実現に役立つものと期待されます。