リムパーザ、BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者さんに対する術後薬物療法としてEUで承認
2022/08/31
文:がん+編集部
BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者さんに対する術後薬物療法として、オラパリブ(製品名:リムパーザ)が欧州連合(EU)で承認されました。
リムパーザ、プラセボと比較して浸潤性乳がんの再発、二次がん、または死亡リスクを42%低下
アストラゼネカと米メルク社は2022年8月4日、術前または術後のいずれかに化学療法を受けたBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がん成人患者さんの術後薬物療法として、オラパリブの単剤療法および内分泌療法との併用療法が、EUから承認されたことを発表しました。今回の承認は、OlympiA試験の結果に基づくものです。
OlympiA試験は、BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がんで、根治的な局所治療および術前または術後補助化学療法を完了した患者さんを対象に、術後薬物療法としてオラパリブとプラセボを比較した第3相試験です。主要評価項目は浸潤性疾患のない生存期間、副次的評価項目は全生存期間などでした。
解析の結果、オラパリブはプラセボと比較して浸潤性疾患のない生存期間の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示し、浸潤性乳がんの再発、二次がん、または死亡リスクを42%低下させました。全生存期間の解析では、死亡リスクが32%低下し、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長が認められました。安全性と忍容性に関しては、これまでに認められているプロファイルと一貫していました。
OlympiA試験運営委員会の委員長であり、Oncology at The Institute of Cancer Research, London and Kings College Londonの教授であるAndrew Tutt氏は、次のように述べています。
「今回の承認は、欧州の遺伝性乳がんの患者さんにとって、治療の新時代の幕開けと言えます。生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異を有する患者さんを含む高リスク早期乳がん患者さんの再発率は依然として非常に高く、4人に1人以上の割合で術後および全身治療後にがんが再発する可能性があります。リムパーザは、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異を有する高リスク早期乳がん患者さんの浸潤性疾患のない生存期間および全生存期間の延長を示した初めてのPARP阻害薬であり、新たな標準治療になると期待しています」