【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年6月2日)

2025/06/02

文:がん+編集部

酸素不足が大腸がんを悪化させるメカニズム解明

 大阪大学は2025年5月14日、大腸がんの表面近くの一部の場所で炎症を背景に酸欠状態が起きると「がんの成長を助ける」というメカニズムを解明したことを発表しました。

 これまで、がん細胞も正常の細胞と同じく、血管から酸素を受け取って勢いよく増えていると考えられ、がん細胞を酸欠状態にする薬が治療に使われることがありました。しかし、場合によってはがんを悪化させることがあり、その理由はわかっていませんでした。

 研究グループは、大腸がんの局所的な酸欠状態に注目し、酸素が足りなくなることでがん細胞の周りを取り囲む線維芽細胞が「悪玉」へと変化し、がんの成長にブレーキをかけるのではなく、むしろがんの成長を促進するというメカニズムを解明。今回の研究成果は、新たな治療法の開発につながることが期待されます。

大腸がん患者さんの一部に共通する標的を用いた新たながん免疫療法の開発に成功

 医薬基盤・健康・栄養研究所は2025年5月15日、大腸がん患者さんの約3%に共通する遺伝子由来のがん細胞特異的抗原を同定し、この抗原を標的とした2つの新たながん免疫療法(遺伝子改変細胞および二重特異性抗体)の開発に成功したことを発表しました。

 遺伝子変異によって生じる新たながん特異的な抗原を標的としたがん免疫療法が注目されていますが、がん特異的な抗原の多くは患者さんごとに異なります。

 研究グループは、大腸がん患者さんの3%に共通して存在するがん特異的な抗原の特定に成功。今回、このがん特異的な抗原を特異的に認識するT細胞受容体を導入した遺伝子改変T細胞を開発しました。さらに、がん特異的な抗原とT細胞の両方に結合する二重特異性抗体も開発し、がん細胞に対して強い細胞傷害活性が確認されました。この研究成果は、患者さんごとに異なる個別化治療だけでなく、一部の患者さんに共通する標的を用いた免疫療法の可能性を示すもので、より迅速な治療提供につながることが期待されます。

食道がん対象、二次治療としてイフィナタマブ デルクステカンを評価するIDeate-Esophageal01試験開始

 第一三共株式会社は2025年5月20日、IDeate-Esophageal01試験を開始したことを発表しました。

 IDeate-Esophageal01試験は、プラチナ製剤ベースの化学療法および免疫チェックポイント阻害薬による治療後に病勢進行した前治療歴のある進行または転移性の食道扁平上皮がん患者さんを対象に、イフィナタマブ デルクステカンと化学療法を比較する第3相試験です。主要評価項目は全生存期間、副次評価項目は無増悪生存期間、客観的奏効率、安全性などで、約510人の患者さんの登録が予定されています。

 イフィナタマブ デルクステカンは、トポイソメラーゼI阻害薬を抗B7-H3抗体に結合させた抗体薬物複合体です。B7-H3は、食道扁平上皮がんを含むさまざまながん種で過剰発現しているタンパク質の一種で、がんの進行や予後の悪化に関係していると考えられています。