HR陽性進行乳がんを対象に「カピバセルチブ+フェソロデックス」を評価した臨床試験の結果をSABCSで発表

2023/01/12

文:がん+編集部

 ホルモン受容体(HR)陽性の進行乳がんを対象に、「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法を評価したCAPItello-291試験の結果が、2022年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表されました。「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法はフェソロデックスと比較して、病勢進行または死亡リスクが40%低下しました。

「カピバセルチブ+フェソロデックス」、フェソロデックスと比較して病勢進行または死亡リスクを40%低下

 アストラゼネカは2022年12月8日、HR陽性の進行乳がんを対象に、「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法を評価したCAPItello-291試験の結果をSABCSで報告したことを発表しました。

 CAPItello-291試験は、局所進行性(手術不能)または転移性HR陽性、HER2低値または陰性の乳がん患者さん708人を対象に、「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法と「プラセボ+フェソロデックス」を比較した第3相試験です。主要評価項目は、全患者さんに対する無増悪生存期間、AKT経路のバイオマーカー(PIK3CA、AKT1、PTEN遺伝子)に変異を認める患者さんに対する無増悪生存期間でした。

 全患者さんに対する解析の結果、「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法は「プラセボ+フェソロデックス」と比較して、病勢進行または死亡リスクを40%低下させました。無増悪生存期間の中央値は、それぞれ7.2か月と3.6か月でした。

 AKT経路のバイオマーカーに変異が認められる患者さんに対する解析では、「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法は「プラセボ+フェソロデックス」と比較して、病勢進行または死亡リスクを50%低下させました。無増悪生存期間の中央値は、それぞれ7.3か月と3.1か月でした。

 全患者さんに対する客観的奏効率は、「カピバセルチブ+フェソロデックス群」22.9%。「プラセボ+フェソロデックス」12.2%でした。バイオマーカー変異のある患者さんでは、それぞれ28.8% と9.7%でした。解析時点での全生存期間は追跡がまだ不十分でしたが、早期データとして有望なものでした。

 「カピバセルチブ+フェソロデックス」併用療法の安全性に関しては、これまでに認められている安全性プロファイルと同様でした。全患者さんで重症度を問わず20%を超える最も高い頻度で認められた有害事象は、下痢(72.4%)、悪心(34.6%)、発疹(38%)、疲労(20.8%)、嘔吐(20.6%)でした。5%を超える患者さんで発生した最も高頻度のグレード3以上の有害事象は下痢(9.3%)と発疹(12.1%)でした。

 ロンドンがん研究所およびRoyal Marsden NHS Foundation Trustの分子腫瘍学教授で、第3相臨床試験(CAPItello-291)の治験責任医師であるNicholas Turner氏は、次のように述べています。

 「今回発表されたデータは、カピバセルチブがHR陽性の進行乳がん患者さんに対する新たな選択肢として、治療を変える可能性があることを示しています。重要なことは、ファーストインクラスの可能性を持つこの治療法が、内分泌療法やCDK4/6阻害薬による耐性または治療後にがんが進行した患者さんの増悪を遅延させることが示された点にあります」