【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年6月16日)
2025/06/16
文:がん+編集部
炭素線を用いた副作用の少ないがん放射線治療「FLASH炭素線治療」を実現する条件を発見
大阪大学は2025年5月23日、炭素線を瞬間的に大線量照射する際、正常組織への損傷を最小限に抑える照射条件を発見したと発表しました。
がん放射線治療において、超短時間に高線量を照射することによるFLASH効果(正常組織への障害を抑制する効果)が注目されていますが、炭素線治療においてどのような照射条件(線量率や照射時間など)が最適かは明らかになっていませんでした。
研究グループは、これまでに短時間に高強度炭素線を発生させる装置を開発しており、今回この照射システムを用いて超高線量率での炭素線照射を実施。炭素線の瞬間的大線量照射で正常組織への障害を軽減できる条件を発見しました。これにより、副作用のより少ないがん治療法(FLASH炭素線治療)への応用が期待されます。
膵臓がんの悪性化に関わる分子メカニズムの一端を解明
京都大学は2025年6月3日、膵臓がんの悪性化に関わる分子メカニズムの一端を解明したことを発表しました。
膵臓がんでは、分化度が高く化学療法が比較的効きやすいタイプと、分化度が低く化学療法が非常に効きにくい悪性度の高いタイプに大きく分けられますが、これまでその分子メカニズムについては十分に解明されていませんでした。
研究グループは、遺伝子の発現を調節するタンパク質複合体の一つである「PBRM1」の発現が低い膵臓がんは、病理学的に低分化がん・未分化がん、腺扁平上皮がんが多く、予後不良であることを発見。マウスモデルを用いてPBRM1の発現を消失させる実験を行ったところ、「分化度の低下」「転移の増加」「化学療法への抵抗性」などが確認され、生存期間が短縮しました。
PBRM1が欠損したマウスでは、「上皮間葉転換マーカーであるVimentinの発現増加」「細胞接着因子の低下」「上皮間葉転換の亢進」などが確認され、転移が増加しました。これに対して薬剤などでVimentin発現を阻害すると、膵臓がん細胞の分化度が高まり、転移が抑制されました。これらの結果から、悪性度の高い膵臓がんに対してはVimentin阻害薬が有効である可能性が示されました。
口腔がんの診断数、著名人のがん公表により約1.5倍に
名古屋市立大学は2025年6月3日、口腔・咽頭がんについて、月別診断数の推移を観察したところ、著名人が口腔がんであることを公表した2019年2月前後で診断数が急増しているという分析結果を発表しました。
2019年1月の全国の口腔がん診断数が784件だったのに対し、2019年3月では1,195件と約1.5倍に増加していました。また、詳細な分析により、このような急増傾向は特に男性、70歳代、舌および口腔底、がんの進展度が限局の場合に認められることがわかりました。
これらの結果から、著名人のがん公表後のメディア報道によって、多くの一般住民の認知度を高め、受診行動の促進につながったことが示唆されました。