切除不能な局所進行食道がん、一次治療として化学放射線療法を評価した臨床試験結果を発表

2023/09/28

文:がん+編集部

 切除不能な局所進行の食道がんに対する一次治療として、化学放射線療法と化学療法を比較した臨床試験の結果を発表。化学放射線療法は化学療法と比較して、局所再発率が低く、予後改善効果が高いという可能性が示唆されました。

化学放射線療法は、化学療法と比較して局所再発率が低く予後改善効果が高いという可能性

 関西医科大学は2023年8月30日、切除不能な局所進行食道がんに対する一次治療として化学療法と化学放射線療法の有用性を検討する多施設共同ランダム化比較試験を行い、導入化学療法は導入化学放射線療法に比べて局所再発率が高く、予後改善効果も認めなかったという研究結果を発表しました。同大学外科学講座の山﨑誠准教授らの研究グループによるものです。

 大動脈や気管といった周囲臓器に浸潤した(T4b)食道がんは、根治化学放射線療法が現在の標準治療となっていますが、3年生存率は15~33%と非常に予後不良です。近年、化学放射線療法により切除可能になった症例に対する外科手術の安全性や長期予後の成績が報告され、T4b食道がんでも集学的治療の有用性が示唆されるようになりました。一方化学療法の進歩も著しく、3剤併用化学療法の高い奏効割合と予後改善効果が報告されており、T4b食道がんに対する導入療法としての有用性が注目されています。

 研究グループは、T4b食道がん患者さん100人を対象に、導入療法として化学放射線療法と化学療法を比較する多施設共同無作為化比較試験を実施。主要評価項目は、2年生存割合、副次評価項目は根治切除割合、安全性などでした。一次治療は、化学放射線療法と化学療法に無作為に分け、一次治療で切除可能となった場合は外科手術を、切除不能の場合は、もう一方の治療を二次治療として行い、二次治療後も同様に切除可能な場合には外科治療が行われました。

 試験の結果、主要評価項目である2年生存割合は、化学放射線療法55.1%、化学療法34.7%で、有意差は認められませんでしたが、化学放射線療法で予後が改善する傾向でした。また、根治切除は84%で施行可能でした。根治切除できた患者さんは、できなかった患者さんと比較して有意に予後良好で、それぞれの2年⽣存率は56.6%と4.6%でした。根治切除した場合の再発部位は、化学療法での局所・所属内再発が有意に高い結果となりました。

 研究グループは本研究の成果として、次のように述べています。

 「本試験の結果から、T4b食道がんにおいて化学放射線療法・化学療法において切除可能となった場合の外科手術は比較的安全に施行することができ、長期予後を望める治療であると考えられました。また、一次治療としての化学放射線療法は、化学療法に比べて局所の再発を抑える効果が高く、それによって予後改善効果も高い可能性が示唆されました」