【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年4月28日)
2025/04/28
文:がん+編集部
免疫チェックポイント阻害薬による肺傷害発症の予測マーカー発見
京都大学は2025年4月11日、がん免疫療法の副反応として発生する肺傷害について、関連する免疫応答を解明したことを発表しました。
PD-(L)1阻害療法は、がん細胞を攻撃する免疫細胞の抑制を解除する治療法です。この治療において、活性化された免疫細胞により正常細胞が攻撃されることがあり、これは肺傷害などの免疫関連有害事象(irAE)につながりますが、その原因となる免疫応答はわかっていませんでした。
研究グループはこれまでに、⽼齢担がんマウスにPD-(L)1阻害療法を施⾏すると肺傷害が発⽣、その肺では本来存在しない場所にリンパ節のような構造が形成され、抗体が沈着することを見出していました。今回、そのマウスにおいて引き起こされる免疫反応の詳細を調べ、PD-(L)1阻害療法により免疫細胞の一種である「CD4 T細胞」の表面にICOSと呼ばれる免疫反応を活性化させる信号分子が増加し、肺傷害につながる一連の反応を引き起こすことを発見しました。さらに、がん患者さんにおいてもICOSはirAE肺傷害の発症と関連していることが示唆され、ICOSを持つCD4 T細胞の量を測定することで、PD-(L)1阻害療法による肺傷害の発症を予測できる可能性を発見しました。
この研究成果は、PD-(L)1阻害療法による肺傷害リスクが高い高齢のがん患者さんにおいて病態改善の標的としても活用が期待されます。
トリプルネガティブ乳がんの悪性化に関わる新たな因子を発見
弘前大学は2025年4月14日、トリプルネガティブ乳がんの悪性化を促進する新しい因子として「Fibronectin type III domain-containing protein 3A(FNDC3A)」を発見したことを発表しました。
研究グループは、トリプルネガティブ乳がんにおけるFNDC3Aの発現と予後との関係を調べるためにデータ解析を実施。その結果、FNDC3A発現が高いトリプルネガティブ乳がん患者さんは、FNDC3A発現が低い患者さんよりも有意に予後が悪いことが明らかになりました。次にFNDC3Aがトリプルネガティブ乳がんの悪性化に与える影響を調べた結果、FNDC3Aの発現抑制によりがん細胞の転移に重要な浸潤能、増殖や薬剤耐性に寄与する幹細胞化がいずれも抑制されることがわかりました。
FNDC3Aはトリプルネガティブ乳がんに対する有望な治療標的となる可能性があり、新たな治療薬の開発につながることが期待されます。
ピロリ菌除菌者の胃がんリスクを高精度に予測する新診断法を開発
国立がん研究センターは2025年4月16日、ピロリ菌除菌者の初発胃がんリスクを胃の細胞に蓄積したDNAメチル化異常で正確にリスク判定できることを確認し、実用化に向け検討を開始したことを発表しました。
今回、ピロリ菌除菌後に開放型胃粘膜萎縮をもつ高リスクな健康人を対象とした前向き研究を実施。発がん前の胃粘膜における胃がんリスクマーカーのDNAメチル化レベルを測定することで、初発胃がんリスクを精密に予測できることがわかりました。また、メチル化レベルを指標に特にリスクの高い超高リスクな人を特定することにも成功しました。
今回の研究で特定された超高リスクな人に対しては、検査間隔を短くすることで胃がんの早期発見および内視鏡的治療が効率的に可能となり、患者さんのQOL向上が期待されます。将来的には、このDNAメチル化異常を用いて、検診が不要な低リスク集団を特定できる可能性もあります。