【週刊】がんプラスPickupニュース(2025年7月14日)

2025/07/14

文:がん+編集部

前立腺がん、骨転移進展に関わる新たなメカニズム解明

 東京医科大学は2025年6月30日、前立腺がんの骨転移において、悪性化した破骨細胞(骨を壊す細胞)から放出される細胞外小胞が腫瘍の進展を加速させ、腫瘍が浸潤する前に炎症性骨破壊を引き起こすメカニズムの一端を解明したと発表しました。

 前立腺がんが骨に転移する際には、多くの場合、骨が新しく作られるような「造骨性骨転移」という状態が認められますが、転移したがんのすぐ近くでは、破骨細胞が異常に活性化していることもわかっていました。

 研究グループは、前立腺がん細胞の影響を受けた破骨細胞では、炎症を引き起こす「IL-1β」という物質に関連した遺伝子の働きが高まり、悪性化していることを明らかにしました。この悪性化した破骨細胞からから放出される細胞外小胞(膜で包まれた小さな袋状の構造)の中には、正常な破骨細胞の働きを活発にし、骨芽細胞(骨を作る細胞)の働きを抑えてしまうマイクロRNAという物質が豊富に含まれていることがわかりました。

 実際に、前立腺がんが骨に転移したマウスを用いた実験では、この悪性破骨細胞由来の細胞外小胞に含まれるマイクロRNAを投与すると、がんの進行が速まり、骨の異常な破壊が進むことが確認されました。

 この研究により、細胞外小胞を標的とした前立腺がんの骨転移に対する新たな治療法の開発が期待されます。

膵管腺がん、新たな治療につながる細胞死誘導の手法を発見

 北海道大学は2025年6月30日、膵管腺がんの生存に重要な代謝経路の弱点としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)合成経路を特定したことを発表しました。

 膵管腺がんは、すい臓がんの一種で、極めて予後不良ながんとして知られています。研究グループは、NAD代謝経路の下流で機能する「GPx4(体内の活性酸素を除去する働きを持つ分子)」が、膵管腺がんの治療標的になることを見出しました。

 さらに、GPx4阻害薬とMEK阻害薬を併用することで、膵管腺がん細胞に「フェロトーシス」という細胞死を誘導し、がんの成長を抑制できることを発見しました。この効果は、ヒト膵管腺がん細胞を移植したマウスでも確認されました。

 治療選択肢が限られる膵管腺がんに対し、新たな治療法の開発につながると期待されます。

がん患者さんの診療体験や療養生活の実態を把握する全国調査結果が発表

 国立がん研究センターは2025年7月3日、「令和5年度患者体験調査」の結果を発表しました。

 同調査は、国のがん対策評価や方向性の検討に活用するため、がん患者さんの診療体験、療養生活の実態を把握するための全国調査で、今回は2014年度、2019年度に続く3回目となります。

主な調査の結果は、以下の通りです。

  • がんの診断から治療開始までが1か月未満だった人は57.5%
  • 治療決定までに医療スタッフから治療に関する情報を得られたと回答した人は88.5%
  • 40歳未満の患者さんのうち、妊よう性に関する説明を受けた人は71.5%で、実際に温存を実施した人は11.9%
  • 金銭的な負担により生活に影響があったと回答した人は24.2%
  • 治療と仕事の両立に関して職場で配慮があったと回答した人は74.5%
  • 全体の総合評価(10点満点)は平均8.2点