「キャンサーペアレンツ」子どもをもつがん患者さんたちがつながる場所

一般社団法人キャンサーペアレンツ 代表　西口洋平さん

2018.9　取材・文　がん＋編集部

　子どもをもつがん患者さんたちがつながるコミュニティサイト「Cancer Parents（キャンサーペアレンツ）」。ここでは、子どもをもつがん患者さんが、自分と同じ境遇の患者さんを探すことができ、仲間になることができます。一般社団法人キャンサーペアレンツ代表の西口洋平さんに、活動に対する想いをうかがいました。
・キャンサーペアレンツの最新の紹介記事はこちらをご覧ください

胆管がんステージIVと告知され、悩んだ“子ども”のこと

　一般社団法人キャンサーペアレンツは、子どもをもつがん患者さんたちがつながるコミュニティサイトを運営しています。キャンサーペアレンツへ参加する条件は、「子どもがいるがん患者」ということ以外は、とくにありません。ここでは、がんの種類やステージ、年齢、住む場所、子どもの年齢など、さまざまな条件から、自分と同じ境遇のがん患者さんを探すことができます。会員数は、2,200人（2018年9月現在）を突破しました。

　私は、2015年の35歳のときにステージIVの胆管がんと告知されました。5年生存率がとても低いことを知り、「死」を意識しました。その際、私をとても悩ませたのが、まだ幼い子どものことです。「子どもには病気のことをどのように伝えたら良いのか？」、「そもそも、伝えるべきなのか？」など、さまざまな問題に直面しました。しかし、私のまわりには、同じように子どもがいるがん患者さんはいなかったので、自分の求める情報を得ることができませんでした。

　「自分と同じ境遇のがん患者さんに会いたいけど、会えない。だったら、出会える場所を自分で作ろう！」という思いではじめたのが、キャンサーペアレンツです。最初は、「子どもをもつがん患者さんのために」という思いではじめたコミュニティですが、患者さんたちの悩みは、子どものことはもちろん、多岐に渡ることを実感しています。子どもをもつがん患者さんは、働き盛りの患者さんでもあります。患者さんは、仕事のこと、お金のこと、家族のこと、治療のことなど、本当に多くの悩みを抱えています。

自分の体験が誰かの決断を後押しすることも

　キャンサーペアレンツをはじめてわかったのは、「同じ境遇だから、分かる」ということです。例えば、「自分の子どもに、がんのことをどのように伝えたら良いのか？」という悩みに対して、明確な答えはありません。しかし、自分と同じ境遇の患者さんがどのように伝えたのか、その体験を知ることができれば、決断をするための判断材料となります。

　実際に、キャンサーペアレンツでのやりとりを通じて、患者さんの行動が変わった事例があります。その患者さんは、治療を受けるかどうか迷っていました。なぜなら、治療に伴う副作用が出ている自分を見て、「子どもがどう思うのか？」が心配だったからです。その患者さんは、キャンサーペアレンツで知り合った同じ境遇の患者さんとのやりとりを通じて、治療を受けることを決意しました。悩みを共有できる仲間がいる、という安心感が、その患者さんの決断を後押ししたのだと思います。

　がんと向き合うなかで、どのような悩みに対しても答えはありません。最後に決断をするのは、自分自身です。でも、自分と同じ境遇の患者さんの体験を知ることで、多くの気付きがあり、それが自分の答えを出すための判断材料になると思うのです。患者さんたちには、キャンサーペアレンツを通じて、多くの患者さんとつながっていただき、新たな一歩を踏み出してほしいと思っています。

がん患者さんが一歩を踏み出す力に

　キャンサーペアレンツでは、子どもをもつ働き盛りのがん患者さんの声を社会へ届ける活動も行っています。そのひとつが、企業とのコラボレーション企画です。例えば、アンケート調査を通じてがん患者さんの声を企業に届け、その声をもとに、企業が商品開発をするというものです。今後は、がん患者さんたちが感じている課題を子どもたちの世代に残さないよう、患者さんたちの声を社会へ届けていく活動も行っていきたいと考えています。

　キャンサーペアレンツの活動が、最終的には、がんになっても子育てをしやすい、働きやすい、生きやすい社会の実現につながればと思っています。自分たちの世代に間に合わなかったとしても、子どもたちが大人になったときの社会に還元できるよう、これからも活動を続けていきます。