「キャンサーペアレンツ」子どもがいるがん患者さんの声をつなぐ・届ける
2024.3 取材・文 がん+編集部
キャンサーペアレンツ(Cancer Parents)は、子どもをもつ、働き世代でもあるがん患者さんが、同じ境遇の人たちとつながり、悩みを相談することができるオンラインコミュニティです。理事の高橋智子さんに、最近の活動やこれからについて話をうかがいました。
「学校行事と副作用」など、子どもをもつがん患者ならではの悩み
キャンサーペアレンツは、子どもをもつがん患者さんが同じ境遇の方を探して交流することのできるオンラインコミュニティで、現在(2024年2月)約4,500人の登録があります。がんの種類やステージ、年齢、子どもの年齢、居住地などはさまざまですが、傾向としては40代~50代、女性の登録者が多いです。
コミュニティサイトでは、会員登録後に日記を投稿したり、会員同士でつながったりすることができます。その日記には、ご自身の治療や体調、生活のこと、お子さんとの関わりなどについての投稿から、日々の想いをつづった投稿などまで、いろいろあります。
例えば、「子どもの行事があるから、副作用のことを考えて治療を延期したいのだけれど、主治医にそういう話をしてもいいのだろうか」といった悩みや、「子どもに自分のがんのことをどう伝えたらいいのか」など、周囲に相談しにくく、医師も明確には答えづらいような質問にも、ここでは経験したパパママが返信してくれます。
このほか、がん教育への取り組みやがん関連のイベントにブース出展をしたり、患者さんの声を社会へ届ける活動の一環として、会員さんを対象にアンケート調査を行ったりしています。また、会員有志で立ち上げた「えほんプロジェクト」では、がんをテーマにした絵本の制作や、絵本を活用したイベントの実施等に取り組んでいます。
創設者の西口洋平さんの旅立ちを機に、いい意味での変化
私は2016年の設立当初から、創設者である西口洋平さんと共に活動してきました。西口さんは2015年にステージ4の胆管がんの告知を受け、2020年の旅立ちまで、キャンサーペアレンツとともに「つながりは、生きる力になる。」というメッセージを発信し続けました。彼の旅立ちまでは、「キャンサーペアレンツ=西口さん」だったので、シンボリックな存在がいなくなり、この先どう活動していけばいいのか、さまざまな葛藤がありました。でも、だからといって、この会をなくしてしまうわけにはいかない、継続していく、という固い決意だけはもっていました。
西口さんの旅立ちはコロナ禍と重なり、オンラインでの交流が続きました。その中で、よりコミュニケーションを大切に、みんなでこのキャンサーペアレンツをつくっていくんだ、という意識が一緒に膨らんでいったように感じています。設立当初から「みんなでつくる」を大切に活動してきましたが、「西口さんと一緒につくる『みんなでつくるキャンサーペアレンツ』」から「みんなでつくるキャンサーペアレンツ」へと、少しずつ変化してきているように感じています。
専門医、企業と共同で調査、患者さんの声が支援に生かされるように
医療従事者の方々と一緒に研究に取り組むことで、「がん経験者の生の声をより確実に社会に発信し、実際の支援や取り組みへとつないでいく」。これは、キャンサーペアレンツが目指すところの1つです。
その活動の1つとして、国立がん研究センター東病院の緩和医療科の医師と企業と共同で、会員さんを対象にさまざまな調査を行っています。これまでに、コロナ禍でのメンタルヘルスや日常生活の変化と不安といったテーマでの調査や、新型コロナワクチン接種に関する調査を行ってきました。最近では株式会社メディリードとともに「アピアランス(見た目)」に関する調査を行い、その結果を先日発表しました。この調査では、見た目の変化が外見上の問題に留まらず、心理的、社会的影響にも深く関係していることが示されました。
声を発信して終わりではなく、実際の生活のさまざまな場面(医療現場・職場・地域・家庭等)につないでいくことで、がん患者さんが本当に抱えている想いや課題を知っていただき、最終的には、がんになっても子育てをしやすい、働きやすい、生きやすい社会の実現につながればと思っています。
日記を読んで、近い境遇の方を探してみて
キャンサーペアレンツのサイトに投稿される日記は、会員登録をしなくてもどなたでも読めるオープンのものと、会員限定のものがあります。公開範囲は投稿者ご自身が設定することができます。オープンになっている投稿もたくさんありますので、一度サイトをのぞいてみていただけたらと思います。がん治療に関する悩みのことや日常生活のことなど、近い境遇の日記が見つかるのではないかと思います。
キャンサーペアレンツは、これからも変わらず「つながりは、生きる力になる。」の想いのもと、在り続けたいと思っています。
がん種 | 全般 |
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地域 | 全国 |
連絡先 | メール info@cancer-parents.com |
活動内容 | 子どもをもつがん患者さん同士がオンライン上でつながれる場を提供。会員登録後に、日記を投稿したり会員同士でつながることができます。キャンサーペアレンツを通じた子育て世代、就労世代のがん患者さんに関わる調査・情報発信、がん教育、講演・イベント参加などにも取り組んでいます。 |