がん細胞で核小体が「鬼の目」のように肥大化する謎を解明、新治療法の開発に期待

文:がん+編集部

 悪性度の高いがんで、鬼の目のように核小体が肥大化するメカニズムを解明。がんの新たな治療法の開発へつながる可能性があります。

核小体の肥大化は、悪性度の高いがんに共通した変化

 広島大学は8月2日、がんで核小体が「鬼の目」のように肥大化するメカニズムを解明したことを発表しました。同大学客員教授で、米シンシナティ大准教授、慶應義塾大学先端科学研究所特任教授の佐々木敦朗博士と、同大学の小藤智史助教、慶應義塾大学先端生命科学研究所の曽我朋義教授、同大医学部の佐谷秀行教授、末松誠客員教授らの研究グループを中心とした日米英独の21研究機関によるものです。

 「がん細胞ってどんな形をしているのか」「がんに共通した形があるのか」という問いには明確な回答はありません。しかし、がんに共通する変化としては、細胞内のDNAを包む核の中の小さな目のような核小体が、「鬼の目」のように肥大化するという変化があります。特に悪性度の高いがんでは恐ろしいほど大きくなることが知られています。約120年前には肥大化することが発見されており、がんの診断や悪性度の指標として利用されてきました。核小体とは、タンパク質を作る巨大なマシン(リボソーム)を作る工場で、たくさんの分子がリボソームを作り出しています。核小体が大きくなるとリボソームが大量に作られ、タンパク質が増加、がん細胞が異常な速さで増殖することがわかっています。

 今回研究グループは、悪性脳腫瘍、神経膠芽腫のエネルギー産生経路を調べたところ、核小体肥大化のメカニズムに、グアノシン3リン酸(以下GTP)エネルギーが関わっていることを明らかにしました。また、マウスを用いた実験において、がん細胞が依存するGTPエネルギーを遮断することで、がんを抑制できることも確認しました。

 論文発表に際し佐々木敦朗博士は次のように述べています。「がん細胞ではエネルギー産生や消費が一様に高まるのではなく、GTPエネルギーが特に重要な作用をしていることに驚きました。何か大きな現象を捉えたと思いました。しかし、この意味を知るには、私のグループの力だけでは難しいことも予感されました。がん細胞が GTPエネルギー代謝をハイジャックし、核小体を操る仕組みを解き明かせたのは、素晴らしい共同研究者の皆様のおかげです。国境と研究分野の壁を超えることで初めてなし得た発見、それがまた嬉しいです。さらに GTP研究を推し進め、がんの『鬼の目』を閉じる治療法を開発し、皆様が健やかに豊かに笑って暮らす世界へ貢献していきたいです」。

 核小体の作用の鍵を握る GTP エネルギー代謝のさらなる研究により、新たながん治療が開発されることが期待されます。