ステージ2の肝細胞がんに対する新治療法、臨床試験で世界初の成功
2019/12/24
文:がん+編集部
ステージ2の肝細胞がんに対する新しい治療法の臨床試験に、世界で初めて成功。肝動脈塞栓療法(TACE)とソラフェニブ(製品名:ネクサバール)を併用する療法です。
TACE+ネクサバール、TACE単独と比べて、無増悪生存期間を約2倍延長
近畿大学は12月4日、肝細胞がんのステージ2における新たな治療法として、肝動脈を塞いでがん細胞に栄養を与えずに死滅させるTACEと、がん細胞に現れる特定の遺伝子を標的にしてがん細胞を攻撃する分子標的薬ソラフェニブを併用する新たな治療法を、世界に先駆け臨床試験で成功したと発表しました。同大医学部内科学教室の工藤正俊主任教授らの研究グループによるものです。
TACE+ソラフェニブ併用の臨床試験が過去に世界で5件実施されましたが、TACEの治療効果を上回る結果は得られていませんでした。研究グループは、5件の臨床試験の内容を精査し、2つの改善点を見つけました。がんの進行を判定する指標とソラフェニブ投与のタイミングです。
これまでは、がんの進行を判定する指標として、一般的な化学療法のための基準を使用していたため、まだTACEの効果が見込める段階でも、がんが進行したと判定され治療継続ができませんでした。また、ソラフェニブの投与は、TACE後とされていました。この2つの要因を踏まえ、研究グループは、TACEに合わせた新たながんの進行に関する判定基準を作り、長期間の治療を可能にするとともに、TACE開始前からソラフェニブを投与しました。
その結果、TACE単独と比較してソラフェニブを併用した場合、無増悪生存期間を約2倍延長(TACE単独13.5か月、TACE+ソラフェニブ 25.2か月)させることを実証しました。
ステージ2の肝細胞がんは、進行がんや末期がんへの移行を防ぐための重要なステージですが、標準治療はTACEしかなく、新しい治療選択が望まれていました。今回の臨床試験の結果、将来的にはTACEとソラフェニブの併用療法が標準治療となることが期待されます。