血液検査による脳腫瘍診断モデルを作成、脳腫瘍の予後改善に期待

2019/12/27

文:がん+編集部

 血液検査による脳腫瘍診断モデルが作成されました。脳腫瘍の早期発見・早期治療介入による予後の改善が期待されます。

膠芽腫、転移性脳腫瘍、中枢神経系悪性リンパ腫も診断が可能

 東京医科大学は12月9日、通常CTやMRIなどの画像で診断される脳腫瘍に対して、リキッドバイオプシー(血液)による診断モデルの作成に成功したと発表しました。同大医学総合研究所の落合孝広教授と国立がん研究センターの研究チームによるものです。

 研究チームは、脳腫瘍の中でも発生頻度の高い悪性神経膠腫(グリオーマ)をはじめとするさまざまな脳腫瘍に対して、血中マイクロRNAを高い精度で鑑別する診断モデルを作成しました。グリオーマ患者さんで有意に変化する複数のマイクロRNAを同定し、それらの組み合わせにより、グリオーマを含むさまざまな脳腫瘍を検出する方法です。悪性脳腫瘍の中でも類似の画像所見を呈する膠芽腫、転移性脳腫瘍、中枢神経系悪性リンパ腫についても診断モデルの作成を試みたところ、血液検査による診断の可能性が示唆されました。

 血液検査という簡便で低侵襲な方法で脳腫瘍が早期発見できれば、早期治療の介入が可能となり、予後の改善が期待されます。

 本研究の成果について、国立がん研究センター中央病院脳脊髄腫瘍科の成田善孝科長は次のように述べています。

 「本研究は、通常画像検査で診断される悪性脳腫瘍が微量な血液検査で診断できる可能性を示した点で大きな意義があると考えます。さらに精度をあげて、血液検査で悪性脳腫瘍の診断ができるようになると、脳腫瘍の早期発見やリスクのある脳外科手術を行わなくても放射線治療や抗がん剤治療を速やかに開始することができます。今後さらに検証を重ねて悪性脳腫瘍の早期発見と治療成績向上に寄与することが期待されます」