PD-1が、T細胞の質を制御するメカニズム解明

文:がん+編集部

 免疫チェックポイント分子のPD-1が、T細胞の質を制御するメカニズムが解明されました。抗PD-1抗体薬によるがん免疫療法の改良や、新しい免疫制御療法の開発が期待されます。

免疫チェックポイント阻害薬の改良や、新しい免疫制御療法の開発に期待

 東京大学は1月9日、PD-1がT細胞の質を制御するメカニズムを解明したことを発表しました。同大定量生命科学研究所の清水謙次特任助教と岡崎拓教授らの研究グループによるものです。

 免疫抑制の解除によるがん免疫療法の開発により、2018年ノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑博士とJames P. Allison博士は、がん細胞に対する免疫応答が免疫チェックポイント分子により無力化されていることを明らかにしました。また、免疫チェックポイント分子の機能を阻害することで、がん細胞に特異的なT細胞を活性化し、がんを治療できることも明らかにしました。これまでに PD-1 がT細胞の活性化を抑制することは知られていましたが、T細胞の遺伝子発現をどのように変化させているかは不明でした。

 研究グループは、T細胞をPD-1が働く条件と働かない条件で抗原刺激し、遺伝子の発現量を調べました。結果、発現量が上昇する遺伝子には、PD-1によって抑制されやすい遺伝子と、されにくい遺伝子があることを発見。また、発現上昇に強い刺激が必要な遺伝子ほどPD-1によって抑制されやすいということも明らかになりました。さらに、PD-1によって発現上昇が抑制されやすい遺伝子の特徴を調べたところ、T細胞が機能を発揮する際に働く遺伝子(サイトカインやCD40Lなど)の発現をPD-1が選択的に抑制していることがわかりました。

 以上のことから、PD-1はT細胞の活性化の程度を単純に弱めるのではなく、特定の遺伝子を選択的に抑制することで、T細胞の質を変化させていると考えられます。今回のメカニズムの解明により、T細胞の機能を制御するメカニズムの理解が進むとともに、抗PD-1抗体によるがん免疫療法の改良および新しい免疫制御療法の開発に役立つと期待されます。

 研究グループは社会的意義として、次のように述べています。

 「PD-1阻害抗体の治療効果は、がんの種類や個人によって大きく異なります。がん特異的T細胞の機能が PD-1によって強く抑制されている場合ほど、PD-1阻害抗体がより有効であると考えられます。PD-1に抑制されやすい遺伝子とされにくい遺伝子の発現パターンを検査し、実際にがん特異的T細胞がどの程度 PD-1によって抑制されているのかを判定することにより、PD-1阻害抗体の治療効果を事前に予測することができる可能性があります。また、PD-1に抑制されやすい遺伝子は、がんや自己免疫の治療標的として有用と考えられます」