第5のがん治療、BNCTに液体のりの主成分を加えると治療効果が大幅向上
2020/02/10
文:がん+編集部
液体のりの主成分である「ポリビニルアルコール」を放射線治療の一種「ホウ素中性子補助療法(BNCT)」に加えることで、治療効果を大幅に向上させることが判明しました。
マウスを用いた実験では、皮下腫瘍をほぼ根治
東京工業大学は1月23日、液体のりの主成分であるポリビニルアルコールを中性子捕捉療法用のホウ素化合物「ボロノフェニルアラニン(BPA)」に加えるだけで、その治療効果を大幅に向上できることを発見し、マウスの皮下腫瘍をほぼ消失させることに成功したことを発表しました。同大科学技術創成研究院化学生命科学研究所の野本貴大助教と西山伸宏教授の研究グループによるものです。
BNCTは、ホウ素に対し熱中性子を照射することで核反応を起こしがんを治療する放射線治療の一種です。難治性の再発がんや多発性がんに対して有効とされ、手術、放射線治療、化学療法、免疫療法に次ぐ第5の治療法として期待されています。しかし、BNCTで使用されるBPAは、がんに長く留まることができませんでした。
研究グループは、BPAを長期にがんに留まらせるため、液体のりの主成分であるポリビニルアルコールとBPAを結合させることで滞留性の向上に成功しました。さらに、マウスの皮下腫瘍に対して治療効果を検討したしたところ、ほぼ根治することを確認しました。
現状の加速器型中性子線源による熱中性子の産生量では、浅い部位のがんに適応が限定されると考えられています。治療の適応を深部までひろげるためには、がん組織内のホウ素濃度を長期的に高く維持することが求められ、本研究成果は大きく貢献できるものと期待されます。