小細胞肺がんに対するDLL3を標的としたがん光免疫療法の開発に成功

文:がん+編集部

 小細胞肺がんに特異的に発現するDLL3という分子を標的とする、近赤外光線免疫療法の開発に成功しました。

光免疫療法に応用、RovalpituzumabとIR700の複合体「Rova-IR700」を作成

 名古屋大学は1月31日、前臨床研究として、小細胞肺がんに対する抗ヒトDLL3抗体Rovalpituzumabと光感受物質IR700の複合体「Rova-IR700」による、近赤外光線免疫療法の開発に成功したことを発表しました。同大大学院医学系研究科呼吸器内科学博士課程4年の磯部好孝大学院生、同大学高等研究院・最先端イメージング分析センターの佐藤和秀S-YLC特任助教らの研究グループによるものです。

 小細胞肺がんは、肺がん全体の15%を占める悪性度の高いタイプの肺がんですが、薬物治療の選択肢が限られており、効果的な治療法が求められていました。成人の体組織には発現せず、小細胞肺がんの細胞膜に特異的に発現するDDL3というタンパク質を標的とする抗ヒトDLL3抗体が開発され臨床試験が行われていましたが、効果と副作用に問題があり開発中止となっていました。

 研究グループは、人体に投与された実績のある抗ヒトDLL3抗体を小細胞肺がんに対する光免疫療法として応用。抗ヒトDLL3抗体と光感受物質IR700の複合体「Rova-IR700」を作成し、近赤外光線を照射する光免疫療法を開発に成功しました。細胞レベルの実験を行ったところ、近赤外光の照射後、速やかに細胞の膨張、破裂、細胞死が観察され、標的外の細胞への影響も特に認められませんでした。マウスの胆がんモデルでの実験でも、明らかな腫瘍の増大抑制と生存の延長が示されました。

 抗体薬とIR700の複合体に近赤外光線を照射する光免疫療法は、米国立がんセンター・衛生研究所の小林久隆博士らが開発した新しい治療法。現在、セツキシマブ(製品名:アービタックス)とIR700の複合体ASP-1929による光免疫療法の臨床試験が、頭頸部がんと食道がんを対象に実施中です。

 研究グループは、今後の展開として次のように述べています。

 「DLL3を標的とする小細胞肺がんに対する近赤外光線免疫療法の効果を細胞実験と動物実験で確認しました。また、DLL3が白人と日本人の小細胞肺がんに人種を超えて広く発現していることも確認できました。本研究は近赤外光線免疫療法を人の小細胞肺がん治療へ応用する際、基礎的知見として貢献することが期待されます。今後、胸部腫瘍に対する近赤外光の照射デバイスの開発や従来の治療との併用など、さらなる応用が検討されています」