がんの増殖や転移を促進するがん遺伝子「NRF3」を発見

文:がん+編集部

 がん細胞の増殖や転移を促進する、新たながん遺伝子が発見されました。新たな治療標的として期待されます。

NRF3が増えると、がんが大きくなり転移しやすくなる

 同志社大学は3月3日、がん抑制因子の働きを阻害する新たながん遺伝子として、転写因子 「NRF3」を発見したと発表しました。同大生命医科学部の和久剛助教と小林聡教授らの研究グループによるものです。

 転写因子は、遺伝子から体のパーツとなるタンパク質が作られる過程で必要な因子のひとつです。今回の研究で、転写因子「NRF3」は、大腸がんをはじめとするさまざまな腫瘍組織で増加していることがわかりました。また、NRF3の量を増やしたヒトがん細胞をマウスに移植した実験において、NRF3の量が増えると、腫瘍が大きくなるだけではなく、肝臓へ転移しやすくなっていることも明らかになりました。

 さらに詳細に解析した結果、NRF3量を増やしたがん細胞では、タンパク質分解酵素であるプロテアソームの活性が高まっている一方、NRF3量を減らしたがん細胞では、がん抑制因子のp53などのタンパク質が増えることもわかりました。

 これまでは、がん抑制因子の働きが失われる場合の多くは、DNAに傷が入る遺伝子変異によるものだと考えられてきましたが、今回の発見により、NRF3が遺伝子変異ではなく、タンパク質分解活性を異常に高めることでがん抑制因子の機能を阻害して、がんを増悪するという新しいメカニズムが提唱されました。

 今回の研究成果により、大腸がんも含め膵臓がんなどNRF3が増加しているがん種でも、有効な治療標的となることが期待されます。