腎臓がん肺転移のメカニズム解明、好中球が関与

文:がん+編集部

 腎臓がんの肺転移のメカニズムが解明されました。白血球の1つ好中球が関与している可能性があります。

BET阻害薬により、腎臓がんの肺転移が抑制されることを動物実験で実証

 東京大学は3月24日、腎臓がんの肺転移のメカニズムを解明するとともに、BET阻害薬によって腎臓がんの肺転移が抑制されることを動物実験で実証したことを発表しました。同大学大学院医学系研究科の西田純特任研究員(研究当時)、江帾正悟准教授、宮園浩平教授らの研究グループによるものです。

 研究グループは、はじめに、ヒト腎臓がん細胞(親株)をマウスに移植し、新しい腎臓がん細胞(亜株)を樹立。この亜株を改めてマウスに移植したところ、親株より早く腎臓がんをつくり肺へ転移したことを確認しました。また、亜株で形成された原発腫瘍や肺転移の組織では、白血球の中でも好中球が多く浸潤し、腫瘍内の炎症を誘発していることがわかりました。

 続いて、好中球を減少させる抗体を使った実験を行ったところ、腫瘍内の炎症により活性化した好中球が、新しく血管をつくる作用、がん細胞を肺に生着させる作用など、転移の重要なプロセスに深くかかわっていることがわかりました。

 さらに、親株と亜株の遺伝子発現を比較したところ、白血球の遊走を引き起こし炎症の形成にかかわるタンパク質(ケモカイン)が、複数同時に上昇していることもわかりました。実際の症例においても、複数のケモカインが同時に高発現している症例では、低発現または単一発現の症例と比較して予後不良でした。

 これらの結果をふまえ、ケモカインを低下させる作用のあるBET阻害薬を、亜株を移植したマウスに投与したところ、原発腫瘍中に存在する好中球と血管新生が減少し、肺への転移も抑制されることが確認されました。

 新たな腎臓がんの治療標的分子が同定され、BET阻害薬を免疫チェックポイント阻害薬など他の分子標的治療薬と併用することで、相乗的な治療効果も期待されます。