「腫瘍の粘液発現パターン」から、浸潤性粘液性肺腺がんの診断・予後予測が可能に

文:がん+編集部

 浸潤性で粘液性の肺腺がんの予後と粘液発現タイプの関係が解明されました。この成果により、「肺浸潤性粘液性肺腺がん」の予後予測が可能になるとともに、新たな治療法の開発につながる可能性があります。

予後良好な「MUC6」高発現例は、女性・腫瘍径が小さい・KRAS野生型と関連

 順天堂大学は10月8日、肺がんの一種である浸潤性粘液性肺腺がんにおいて、がん細胞の粘液発現タイプを解析することで、予後予測の可能性を見出したことを発表しました。同大学医学部人体病理病態学講座の岸川さつき助手、林大久生准教授、齋藤剛准教授、呼吸器外科学講座の高持一矢准教授らの研究グループによるものです。

 浸潤性粘液性肺腺がんは、分子標的薬の治療対象となる遺伝子異常が少なく、患者さんの予後に個人差があります。予後の良い患者さんと予後の悪い患者さんを区別し、患者さんに合った治療選択をするためにも、新たなスクリーニング法が必要とされています。

 研究グループは、順天堂病院で患者さんから切除した組織について、網羅的遺伝子解析と粘液発現パターンを組み合わせた解析を行いました。その結果、浸潤性粘液性肺腺がんの再発すべてが肺内に限られていたことから、一般的な肺腺がんとは異なる特徴をもつことがわかりました。

 さらに、遺伝子解析の結果から約3分の2にKRAS変異を確認、一般的な肺腺がんでみられるEGFR遺伝子変異やALK、ROS1、RET融合遺伝子は認められませんでした。また、KRAS遺伝子に変異があると予後不良であることがわかりました。

 粘液発現パターンを解析したところ、粘液性物質ムチン「MUC1」と「MUC4」が陽性は予後不良で、通常発現のない「MUC6」が高発現していると予後良好であることがわかりました。MUC6が高発現例は、より腫瘍径が小さく、女性で、KRAS野生型と有意に関連していることも明らかになりました。

 これらの結果から、浸潤性粘液性肺腺癌の粘液発現パターンを調べることで患者さんの予後予測ができる可能性があり、今後の肺腺がんの診断の細分化や治療選択に大きな道をひらく可能性が示されました。

 研究グループは、今回の研究成果の発表に際し次のように述べています。

 「近年、分子標的治療や免疫療法など、肺がんに対するさまざまな治療法が開発され、従来の病理形態診断に加えて、病理標本を用いたバイオマーカーの同定が治療法選択に重要な位置を占めるようになっています。現在、当研究グループでは、肺がんの予後や新規治療開発につながるバイオマーカー開発を目指して研究を進めています」