上部尿路上皮がん、尿中の遺伝子変異の検出により高い精度で診断できることを証明

文:がん+編集部

 腎盂や尿管の尿路上皮に発生する予後不良な上部尿路上皮がんは、遺伝子変異に基づき5つの分子病型に分類できること、また、尿中の遺伝子変異によって精度の高い診断が可能になることが明らかになりました。

遺伝子異常に応じた治療や薬剤選択が可能となる個別化医療につながる研究成果

 京都大学は6月15日、遺伝子異常に基づく上部尿路上皮がんの分子病型分類と臨床的特徴明を明らかにし、尿中の遺伝子変異の検出により高い精度で診断できることを証明したことを発表しました。同大医学研究科教授の小川誠司教授(兼・ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)主任研究者)、藤井陽一同研究員(兼・同所属研究者)、東京大学の久米春喜教授、宮野悟教授(現・東京医科歯科大学M&Dデータ科学センター長)らの研究グループによるものです。

 尿路上皮がんは、尿路(腎盂、尿管、膀胱)に発生するがんで、上部尿路上皮がんは、そのうち腎盂、尿管に発生するがんの総称です。尿路上皮がんの大部分(90~95%)を膀胱がんが占め、複数の大規模なゲノム解析が行われてきた一方、上部尿路上皮がんは尿路上皮がんの5~10%と希少なため、大規模なゲノム解析は今まであまり行われておらず、遺伝子異常について十分に解明されていませんでした。上部尿路上皮がんは進行するまで自覚症状に乏しく、しばしば発見時には進行、転移をきたしていることがあるといわれています。

 尿路上皮がんの場合、超音波検査や尿細胞診が手軽で身体に負担のかからない検査として通常行われますが、解剖学的な位置の問題から、上部尿路上皮がんは膀胱がんと比べ、これらの検査での発見、診断は困難とされています。確定診断のために行われる尿管鏡や造影検査は、患者さんの身体に負担がかかり、副作用の可能性もあることから、より簡便で感度の高い検査が望まれてきました。

 研究グループは、上部尿路上皮がんの腫瘍検体および術前に採取した患者さんの尿を用いて大規模なゲノム解析を行い、次の2つのことを証明しました。

1)上部尿路上皮がんは遺伝子変異に基づき、異なる生存率を示す5つの分子病型に分類できること
2)術前の尿中にはがん組織と同一の遺伝子異常が認められ、上部尿路上皮がんの精度の高い診断が可能となること

 研究グループは波及効果、今後の予定として、次のように述べています。

 「本研究は上部尿路上皮がんの研究では最大規模のものであり、その遺伝子異常の全貌を明らかにすることができました。我々が提唱する病型分類並びに尿を利用した診断方法は、より簡便かつ正確な診断を可能とし、今後健診などでのスクリーニング検査への応用や、それぞれの患者さんの遺伝子異常に応じた治療法や薬剤の選択が可能となり、上部尿路上皮がんの治療成績を飛躍的に向上させることが期待されます」