リムパーザ、BRCA陽性早期乳がんの術後補助療法として再発リスクを42%低下
2021/07/06
文:がん+編集部
オラパリブ(製品名:リムパーザ)を、BRCA遺伝子変異陽性の高リスク早期乳がん患者さんに対する術後補助療法として評価したOlympiA試験で、再発リスクを42%低下したことがわかりました。
BRCA遺伝子変異陽性の早期乳がんの新たな治療選択となる可能性も
アストラゼネカは6月3日、BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がん患者さんを対象に、PARP阻害薬オラパリブを評価としたOlympiA試験の結果を発表しました。
OlympiA試験は、BRCA陽性かつHER2陰性の高リスク早期乳がんで、根治的な局所治療および術前または術後補助化学療法を完了した患者さんを対象に、術後補助療法としてオラパリブとプラセボを比較する第3相試験です。主要評価項目は浸潤性疾患のない生存期間(局所領域再発、遠隔再発、新規がん、または総死亡までの期間)、主な副次的評価項目は全生存期間、遠隔転移を伴わない生存期間などでした。
試験の結果、オラパリブはプラセボに対し、再発・二次がん・死亡リスクを42%低下しました。3年時点で浸潤性乳がんまたは二次がんの発現なしで生存していた患者さんの割合は、オラパリブ85.9%、プラセボ77.1%でした。
また、副次的評価項目の遠隔転移を伴わない生存期間でも、統計学的に有意で臨床的に意義のある延長を示し、遠隔転移再発または死亡のリスクを43%低減しました。今回の解析時点では、オラパリブで低い死亡率を示しましたが、全生存期間に統計学的有意差は認められませんでした。今後も全生存期間の評価は継続されます。
Facing Our Risk of Cancer EmpoweredのExecutive Directorであり、OlympiA試験運営委員会のメンバーでもあるSue Friedman氏は、次のように述べています。
「乳がんの初期治療は大きな進歩を遂げてきましたが、患者さんはがん再発への恐怖を依然として強く抱えています。がんの再発を防ぎ、患者さんを不安にさせないよう、術後補助療法における新規の標的治療が必要とされています」
また、OlympiA試験運営委員会の委員長であり、Oncology at The Institute of Cancer Research, London and Kings College Londonの教授であるAndrew Tutt氏は、次のように述べています。
「OlympiA試験における世界的な大学と産業界のパートナーシップが、BRCA1またはBRCA2遺伝子変異を有する早期乳がん患者さんに対する新たな治療選択となり得る治療薬の特定につながったことに興奮しています。遺伝性のBRCA変異を有する早期の乳がん患者さんは、変異のない患者さんと比較して、通常よりも若年で乳がんと診断されます。リムパーザは、遺伝子検査によってこれらの遺伝子変異が確認された多くの患者さんにおいて、生命を脅かす再発やがんが広がる確率を低減するために、乳がんのあらゆる標準的な初期治療後に使用される可能性があります」