がん細胞の増殖や進展を促進する2つの「がん間質細胞」を同時に抗がん剤を届ける物質を開発

文:がん+編集部

 がん細胞の増殖や進展を促進する2つの「がん間質細胞」を同時に標的として、抗がん剤を届ける物質が開発されました。難治性がんに対する新たな治療法として期待されます。

がん微小環境の改善と抗腫瘍効果を動物実験で確認

 熊本大学は8月24日、がん細胞の増殖や進展を促進する2つの「がん間質細胞」腫瘍関連マクロファージ(TAM)とがん関連線維芽細胞(CAF)を同に標的として、抗がん剤を届ける新たな物質「monoPEG40k-Man-HAS」を開発したことを発表しました。同大大学院生命科学研究部の水田夕稀研究員、前田仁志助教、渡邊博志准教授、丸山徹教授らの研究グループと徳島大学、崇城大学、第一薬科大学の研究グループによるものです。

 難治性のがんに対する新たな治療標的として注目される「がん微小環境」は、がん細胞とその周りの間質細胞に存在するさまざまな細胞から構成されるがん特異的な局所的環境です。細胞のがん化を促進するような性質に変わった間質細胞とがん細胞が相互作用することで、がんの増殖や転移、悪性化、薬剤耐性の原因の1つとなっていいることはわかっていましたが、未だ有効な治療法は開発されていません。この要因として、がん微小環境を構成する主な間質細胞群であるTAMやCAFを効率良く制御する方法が確立されていないためです。TAMとCAFは、いずれもがん細胞と相互作用して血管新生や転移組織の再構築を促進する因子の産生など、がん組織の増殖・浸潤・転移過程に深く関与することから、がん微小環境を悪化させる治療抵抗性因子として中心的な役割を担っています。

 研究グループは今回、TAMとCAFを同時に標的とする抗がん剤送達システムとして、送達を担う物質「monoPEG40k-Man-HAS」を開発しました。

 「monoPEG40k-Man-HAS」に抗がん剤のパクリタキセルを搭載し、メラノーマ担がんマウスに投与しその効果を検証しました。その結果、TAMとCAFを同時に効率良く認識し、パクリタキセルを届けることでがん微小環境を改善し、抗腫瘍効果を発揮したことがわかりました。

 研究グループは、成果と展開として次のように述べています。

 「本研究では、がん微小環境を支配する間質細胞であるTAMとCAFを二重標的化する新規薬物送達担体monoPEG40k-Man-HASの設計と開発に成功しました。本研究成果は、onoPEG-Man-HSAが難治性がんの治療において有望な薬物送達担体であることを明らかにしただけではなく、TAMとCAFの二重標的化という新しい治療戦略の有用性を示しており、今後更なる応用が期待されます」