早期胃がん・大腸がんの診断数が減少―コロナ禍が影響の可能性
2021/09/28
文:がん+編集部
横浜市立大学は、横浜市内の2つの医療機関において食道がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、胆道がんなど消化器がんに対する新規の診断にコロナ禍が及ぼした影響の調査結果を発表。早期の胃がん・大腸がんの診断数が減少し、大腸がんでは進行した状態で発見される患者数が増加しました。
再診患者数はコロナ禍でも有意な変化はないが、初診者数は有意に減少
海外では、新型コロナウイルスの流行に伴う医療崩壊やロックダウンの影響で、新たにがんと診断される患者さんが著しく低下していることが報告されています。そこで、研究グループは、新型コロナウイルスの流行の影響が日本の消化器がんに及ぼした影響を調査しました。
同大学附属病院と国立病院機構横浜医療センターの2病院で2017~2020年までの4年間で新たに消化器がん(食道がん、胃がん、大腸がん、膵臓がん、肝臓がん、胆道がん)と診断された全患者さん5167人の診断時のステージを調査。日本で本格的に新型コロナウイルスの流行が始まった2020年3月以上の流行期とそのまえの期間を比較したところ、一部の消化器がんで新規の診断数が減少していることがわかりました。
食道がん、膵臓がん、肝臓がん、胆道がんでは大きな変化は見られませんでしたが、胃がん26.9%、大腸がん13.5%と有意な減少が認められました。ステージ別の比較では、胃がんのステージ1が35.5%、大腸がんのステージ0が32.9%、ステージ1が34.0%と有意に減少し、ステージ3の大腸がんでは68.4%と大幅な増加が認められました。
再診患者数は流行前後で有意な減少は認めませんでしたが、初診者数は有意に減少しており、受診制限は行われなかったものの、無症状・軽症状の患者が受診を控えた結果初診者数が減少したと考えられます。胃がんや大腸がんは早期では症状が出ないことがほとんどで、自粛による受診控えにより早期胃がん、早期大腸がんの診断数が減少した可能性があります。また、大腸がんに関しては大腸カメラの施行時期の遅れにより進行したステージで発見される患者さんが増加した可能性もあります。
研究グループは研究結果の意義と今後の展望として、次のように述べています。
「がんの発生率はCOVID-19前後でも大きな変化はないと考えられますが、診断数が減少していることより、今後も進行がんで発見されるケースが増える可能性があるため、適切なタイミングでの病院受診、胃カメラ検査、大腸カメラ検査などの検診を延期しないで、がんの早期発見の重要性を呼びかけることも大切だと考えます。2021年もまだCOVID-19の流行が続いており、引き続きがんの診断数や診断時のstageを注視しながら、患者さんへの啓発も進めていきたいと考えています」