乳房再建手術の共同研究を開始-がん研有明病院・ワコール

文:がん+編集部

 がん研究会有明病院と株式会社ワコールが、乳房再建手術に関する共同研究を開始しました。「乳房を取り戻し、明るく前向きな人生を送りたい」と願うすべての患者さんが、乳房再建手術を選択できる環境を実現するための共同研究です。

乳房を取り戻し、明るく前向きな人生を送りたいと願うすべての人のために

 がん研究会有明病院とワコールは9月22日、「乳がん罹患により乳房を切除された患者さんに、一人でも多く乳房再建手術を選択いただくこと」を目的に、乳房再建の発展に向けた共同研究を開始したことを発表しました。

 乳がんの手術で乳房を失ったことで、日常生活で不便さや不自由さを感じている患者さんは少なくありません。乳房を失った患者さんのために乳房再建手術という選択肢がありますが、この再建手術を受けられる患者さんは、全乳房切除手術を受けた患者さんの20%に満たないといわれています。

 そこで、「女性のバスト」に関するノウハウをもつワコールとがん研究会有明病院は、「乳房を取り戻し、明るく前向きな人生を送りたい」と願うすべての患者さんが、乳房再建手術を選択できる環境を実現するため、共同研究を開始しました。研究内容は、「サージカルブラジャー」の開発と「3Dプリントバスト」の活用の2つです。

 「自家組織」を移植する再建手術では、再建する側の乳房の大きさや形状を目視で確認・判断して行われてきました。しかし、「ブラジャーのサイズが合わない」「ブラジャーのワイヤーが胸にあたって痛い」などの悩みを持つ患者さんも一定数います。ワコールの「3D smart & try」による3D計測サービスとサイズオーダーブラジャー製造の技術を活用し、「サージカル(手術用メジャメント)ブラジャー」を作成。ブラジャー着用に適した乳房の大きさや形状を、再建手術を行うチームが可視化できることで、患者さんにとって満足度の高い乳房再建を実現する「サージカルブラジャーの開発」という試みです。

 また、がん研有明病院の医療技術、ワコールの「3D smart & try」、3Dプリント技術により、乳房を再現した「3Dプリントバスト」の活用です。3Dボディーデータをもとにした3Dプリンタによる患部や人体の部分再現は、乳房再建手術を含む医療現場のさまざまな課題に対応するという観点で大きな期待が寄せられています。今後、活用方法を含め可能性について研究が進められます。

 同研究会有明病院形成外科の矢野智之部長は、次のように述べています。

 「乳房再建に携わる医師として、どうしたら患者さんが望む乳房再建を行なうことができるのだろうかと長らく悩んできました。女性のバストに関して多くのノウハウを持つワコール様とチームを組む事はかねてからの念願でもありました。今回の取り組みで、ブラジャーを介して患者さんが御自身の再建のゴールに積極的に関わることができます。患者さん・ワコール・がん研が手を取り合うことで、患者参加型の医療の実現の一歩に繋がることに大きな喜びと可能性を感じています」

 また、ワコールの執行役員でイノベーション戦略室の下山廣室長は、次のように述べています。

 「弊社は、70年以上にわたり、主に下着の提供を通じて、一人ひとりの方の身体、日常に寄り添ってきました。今回、有明病院様より、弊社の培った知見と現在注力するデジタルサービスが、乳房再建の発展に寄与できる可能性についてお話をいただいた際は、強い使命感を感じました。世の女性に美しくなっていただくことにより広く社会に寄与することは弊社の目標です。一人でも多くの方に乳房再建を通じて元の日常を取り戻していただくことに、この共同研究が広く貢献できるよう、しっかり取り組んでいきたいです」