アルペリシブ、CDK4/6阻害薬による治療後のHR+/HER2-転移性・再発乳がんに対し有効性を示す

2022/02/09

文:がん+編集部

 PIK3CA変異のあるHR陽性かつHER2陰性の転移性・再発乳がんに対するBYLieve試験で、CDK4/6阻害薬による治療後のアルペリシブの有効性が認められました。

アルペリシブ、CDK4/6阻害薬耐性関連の遺伝子変異に関わらずCDK4/6阻害薬の治療後に有効

 ノバルティスは2021年12月10日、BYLieve試験の3つコホート(観察対象となる集団)すべての解析で、アルペリシブの有効性を示した新たなデータを発表しました。

 BYLieve試験は、CDK4/6阻害薬と内分泌療法などにより治療中または治療後に病勢進行した、PIK3CA変異のあるHR陽性かつHER2陰性の転移性・再発乳がんの閉経前後の女性と男性を対象とした3つのコホートで構成された第2相試験です。

 コホートAでは、「CDK4/6阻害薬+アロマターゼ阻害薬」の前治療歴がある患者さんを対象に、「アルペリシブ+フルベストラント」の有効性と安全性が評価されました。

 コホートBでは、「CDK4/6阻害薬+フルベストラント」の前治療歴がある患者さんを対象に、「アルペリシブ+レトロゾール」の有効性と安全性が評価されました。

 コホートCでは、全身化学療法またはエンドロクリン療法の前治療的がある患者さんを対象に、「アルペリシブ+フルベストラント」の有効性と安全性が評価されました。

 主要評価項目は6か月時点での時点で病勢進行なく生存している患者さんの割合、副次的評価項目は最大25か月の無増悪生存期間、奏効率、臨床的有用率、全生存期間などでした。

 18か月の追跡調査後のコホートAの解析では、全生存期間(中央値)は26.4か月で改善が認められました。すべてのグレードで最もよくみられた有害事象は、下痢(63.8%)、高血糖(59.8%)、悪心(46.5%)、および発疹(31.5%)でした。

 コホートCの解析では、6か月時点の時点で病勢進行なく生存している患者さんの割合が48.7%で主要評価項目を達成。PIK3CAを原因遺伝子とする標的治療薬として、アルペリシブの臨床的に意義のある活性が確認されました。安全性に関しては、新たな安全性シグナルは認められず、すべてのグレードで最もよくみられた有害事象は、高血糖(65.1%)、下痢(52.4%)、悪心(40.5%)、および発疹(38.9%)でした。

 コホートAとBの探索的バイオマーカー解析および事後解析により、CDK4/6阻害薬治療の早期中止歴があるCDK4/6阻害薬耐性の転移性乳がん患者さんに対し「アルペリシブ+フルベストラント/レトロゾール」の有効性が示され、これらの患者さんでCDK4/6阻害剤直後の治療選択肢としてアルペリシブと内分泌療法の併用が支持されました。

 グレード3以上の有害事象は、コホートAの6か月以下の患者さんの84.6%、6か月超の患者さんの66.0%で発現。コホートBの6か月以下の患者さん62.5%、6か月超の患者さんの72.5%で発現しました。

 コホートAとBの探索的血中循環腫瘍DNA解析から、アルペリシブが、併用する内分泌療法や腫瘍のゲノムプロファイル、その他のCDK4/6阻害薬耐性に関連する遺伝子変異に関わらず、CDK4/6阻害薬による治療後に有効であることが認められました。コホートAのように曝露期間が長い場合でも、3つのコホートで新たな安全性シグナルは認められず、アルペリシブに蓄積毒性がないことが確認されました。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校ヘレン・ディラー・ファミリー総合がんセンターの乳がんおよび臨床試験教育責任者であるHope S. Rugo博士は、次のように述べています。

 「BYLieve試験の3コホートすべてから得たデータは、変異を有するHR+/HER2-乳がん患者さんのCDK4/6阻害薬による治療後のアルペリシブのベネフィットを示しており、これは医学界や私たちがケアしている転移性乳がん患者さんにとって価値のあるものです。このデータは、アルペリシブの有効性および安全性を示し、さらに、CDK4/6阻害薬による治療期間に関わらず、アルペリシブがさまざまなサブグループの患者さんにベネフィットをもたらす可能性について、意義のある知見を示しています」

※血液中にある腫瘍から遊離されたDNAの解析