乳がん細胞のリンパ節転移につながるメカニズムを解明
2022/03/30
文:がん+編集部
乳がん細胞のリンパ節転移につながるメカニズムが解明されました。今後、他のがん種でも転移の詳細が明らかになることが期待されます。
ケモカインの種類と役割の解析で、他がん種でもがん転移メカニズムの解明が期待
近畿大学は2022年3月16日、細胞移動を誘導するケモカインというタンパク質の役割を解析することで、乳がん細胞のリンパ節転移につながるメカニズムを解明したことを発表しました。同大学理工学部生命科学科の早坂 晴子准教授らの研究グループによるものです。
ケモカインは、白血球を特定の方向へ移動させるタンパク質で、がん細胞ではいくつかのケモカインが発現しており、がん細胞の増殖やリンパ節への転移を促進させることがわかっています。しかし、そのメカニズムはまだ不明で、詳細な解析が求められていました。
研究グループは、まずヒト乳がん細胞から、リンパ節に高頻度で転移する乳がん細胞を作製。さらに、乳がんのモデルマウスを使い、ケモカインと乳がん細胞のリンパ節への転移メカニズムを解析しました。
その結果、さまざまな組織で発現する「CXCL12」というケモカインが、がん細胞に作用することで、主にリンパ組織で発現するケモカイン「CCL21」への反応が活発になり、がん細胞がリンパ管へ侵入。リンパ節に移動し転移が発生することがわかりました。
今後、他のがん種に対してもケモカインの種類とその役割を解析することで、がん転移のメカニズムが解明されることが期待されます。