ALK阻害薬耐性肺がんに対する新たな治療標的を発見

2022/04/04

文:がん+編集部

 ALK阻害薬の薬剤耐性となった肺がんに対する、新たな治療標的が発見されました。

「GSK3阻害薬+ロルラチニブ」併用で、顕著な増殖抑制および細胞死を誘導

 がん研究所は2022年3月17日、ALK融合遺伝子陽性肺がんに対する、ALK阻害薬抵抗性となったがん細胞の新たな治療標的候補を発見したことを発表しました。同研究会がん化学療法センター基礎研究部の片山量平部長、同研究部所属で東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程の清水裕貴大学院生らの研究グループによるものです。

 ALK融合遺伝子がある非小細胞肺がんに対しては、ALK阻害薬が高い有効性を示し、現在5つのALK阻害薬が承認されていますが、治療から数年以内には薬剤耐性が起こり、再増悪することが課題となっています。

 研究グループは、ALK阻害薬の1つロルラチニブ(製品名:ローブレナ)の薬剤耐性となった細胞を実験的に樹立。ロルラチニブ抵抗性細胞に対し、90種類の承認済み薬剤や臨床試験中の薬剤の効果を試した結果、GSK3阻害薬「LY2090314」とロルラチニブを併用することで顕著な増殖抑制および細胞死誘導を示すことが明らかとなりました。また、ロルラチニブとGSK3阻害薬を最初から使用したところ、1週間後に残存してくる抵抗性細胞の数が顕著に減少しました。

 さらに、実際にアレクチニブ(製品名:アレセンサ)治療後に耐性となったALK陽性肺がん患者さんより樹立された獲得耐性細胞に対して、同様の薬剤ライブラリースクリーニングを行った結果、GSK3阻害薬とロルラチニブを併用することで、増殖抑制効果が見られました。

 研究グループは、次のように述べています。

 「本研究により、GSK3阻害薬が、ロルラチニブ抵抗性残存細胞を抑制することで、ロルラチニブ獲得耐性細胞の出現自体を抑制する可能性を示唆されました。現在、GSK3阻害薬はアルツハイマー型認知症の治療薬として臨床試験が行われていますが、薬剤耐性がんの患者さんに投与した際の有効性や安全性を明らかにするためには、前臨床および臨床試験によるさらなる検討が必要です」