卵巣がんを完全切除、小さながんでもはっきり見える蛍光試薬を開発

2022/04/21

文:がん+編集部

 近赤外線レーザーを照射することで、卵巣がん細胞を手術中に可視化する新たな蛍光色素が開発されました。

卵巣がん腹膜播種マウス、投与24時間後まで1ミリ以下の微小な腫瘍組織を検出可能

 大阪市立大学は2022年3月29日、近赤外線レーザーを照射することで、小さながんでもはっきり見える蛍光試薬を開発したことを発表しました。同大学大学院医学研究科女性病態医学の福田武史講師と、ハーバード大学、ジョージア州立大学との共同研究によるものです。

 卵巣がんの手術では、手術を行う医師の眼と手でがん組織を識別するため、取り残す可能性があります。卵巣がん治療では、手術で病巣を完全に切除することが、治療成績の向上となるため、新たな技術が求められています。

 研究グループは、近赤外領域に蛍光を持つスクアライン色素の化学構造や電荷に修飾を加えることで、高輝度で安定した卵巣がん指向性のある蛍光色素「OCTL14」の開発に成功。OCTL14を卵巣がん腹膜播種マウスモデルに投与したところ、投与24時間後まで1ミリ以下の微小な腫瘍組織を検出し、その蛍光ガイド下での手術では肉眼だけに比べて多数の腫瘍除去ができました。

 今回開発された蛍光色素は、産婦人科医による卵巣がんの手術成績を向上させ、女性患者さんの予後を改善する画期的な新技術となることが期待されます。

 研究グループは、次のように述べています。

 「近年卵巣がんの治療は様々な分子標的治療薬の登場により日々進歩しています。しかし治療成績向上に最も大事なことは手術による完全切除です。今回開発した蛍光色素を用いることで、腫瘍の局在をよりはっきりさせることができ、卵巣がんの完全切除の達成を助け、卵巣がん患者の予後を改善することが期待されます」