免疫チェックポイント分子「LAG-3」による、がん免疫抑制メカニズムを解明

2022/05/19

文:がん+編集部

 免疫チェックポイント分子の1つ「LAG-3」のがん免疫抑制メカニズムが、解明されました。がんや自己免疫疾患に対する治療法の開発につながることが期待されます。

LAG-3を標的とした効果的かつ安全な治療法の開発に期待

 東京大学は2022年4月12日、免疫チェックポイント分子の1つ「LAG-3」のがん免疫抑制メカニズムを解明したことを発表しました。同大定量生命科学研究所の丸橋拓海助教、岡崎拓教授らの研究グループと、徳島大学先端酵素学研究所の小迫英尊教授、竹本龍也教授、同大学院医歯薬学研究部の石丸直澄教授、北海道大学大学院薬学研究院の前仲勝実教授らとの共同研究によるものです。

 免疫チェックポイント阻害療法は一部のがんに対して劇的な治療効果を発揮し、現在までに複数の種類のがんに対して使用が認可されています。しかし、その奏効率は10〜30%と低く、さらなる改良が求められています。LAG-3は、PD-1CTLA-4に次ぐ第3の免疫チェックポイント分子として期待されていますが、基礎研究は後回しにされており、LAG-3の抑制機能が発揮される条件などの基本的な情報さえ不足しているという状況です。

 研究グループは先行研究で、LAG-3の抑制機能を発揮するための条件として、LAG-3のリガンド(特定の受容体の特定の結合部位に特異的に結合する物質)がpMHCIIであることを発見していました。その後、他の研究グループから、FGL1という分子がLAG-3のリガンドであるという報告がされました。

 今回、研究グループはpMHCIIとFGL1を、LAG-3の抑制機能を発揮するためのリガンドとして細胞実験と動物実験で検証。その結果、LAG-3が抑制機能を発揮するためには、pMHCIIとの結合が必須であり、FGL1との結合は不要であることを突き止めました。本研究により、LAG-3が安定なpMHCIIと結合することにより機能を発揮し、T細胞の活性化を抑制して自己免疫疾患を軽減するとともに、がん免疫を減弱していることが分かりました。

 研究グループは社会的意義として、次のように述べています。

 「免疫チェックポイント阻害療法の成功により、各種免疫補助受容体とした新規治療法の開発競争が世界中で激しく繰り広げられています。一方、基礎研究は後回しにされており、各分子の機能について基本的な情報さえ不足している状況です。LAG-3は CTLA-4に次いで初めて、PD-1と同時に阻害することで併用効果を示すことが臨床試験において確認された分子であり、新たな薬剤標的として特に大きな注目を集めています。今回、LAG-3の機能が発揮されるメカニズムが解明されたことにより、LAG-3を標的とした効果的かつ安全な治療法の開発につながると期待されます」