ウイルス療法薬G47Δ、膠芽腫に対する医師主導試験の最終結果を報告
2022/08/08
文:がん+編集部
再発もしくは残存病変のある膠芽腫を対象に、第三世代がん治療用ヘルペスウイルスG47Δの医師主導試験の最終結果が報告されました。1年生存割合は84.2%で、有効性と安全性が示されました。
G47Δ、治療開始後の1年生存割合は84.2%
東京大学医科学研究所は2022年7月22日、再発もしくは腫瘍が残存した膠芽腫患者さんを対象に、第三世代がん治療用ヘルペスウイルスG47Δを評価した医師主導試験の最終結果を報告したことを発表しました。本成果は2022年7月21日、国際科学雑誌「Nature Medicine」オンライン版で公開されました。
今回発表された医師主導試験は、放射線療法およびテモゾロミド投与後に腫瘍が残存または再発した19人の成人患者さんを対象に、G47Δの有効性と安全性を評価した第2相試験です。主要評価項目は治療開始後の1年生存割合、副次的評価項目は全生存期間、無増悪生存期間などでした。
最終解析の結果、G47Δ治療開始後の1年生存割合は84.2%でした。副次評価項目については、G47Δ治療開始後の全生存期間中央値が20.2か月、初回手術からの全生存期間中央値が28.8か月、G47Δ治療開始後の無増悪生存期間中央値が4.7か月でした。
G47Δと関連する有害事象は、発熱(89.5%)が最も頻度が高く、続いて嘔吐、悪心、リンパ球減少、白血球減少でした。MR画像上の特徴として、G47Δ投与直後に、投与部位に一致して腫瘍内部が抜けて見える所見(造影効果の消失)と、腫瘍全体が膨らむ所見(造影領域の拡大)が、G47Δ投与の度に繰り返し認められました。
G47Δは、日本初のウイルス療法薬(一般名テセルパツレブ、製品名デリタクト注)として、2021年6月に製造販売承認されています。
同研究所は、今回の発表に際し展望として次のように述べています。
「G47Δは、本治験を主試験として製造販売承認申請がなされ、2021年6月に日本初のウイルス療法薬(再生医療等製品、一般名テセルパツレブ、製品名デリタクト)として承認されました。脳腫瘍に対しては世界で初めて承認されたウイルス療法薬です。2021年11月より悪性神経膠腫を適応症として販売が開始されています。G47Δの長期効果には抗腫瘍免疫が関与し、それが腫瘍縮小を来すにはG47Δ治療開始後4~5か月以上要することを考慮すると、初期治療後なるべく早い時期にG47Δの治療を行う方が効果的であると考えられます。G47Δは全ての固形がんに同じメカニズムで同じく作用することから、今後脳腫瘍以外のがんにも適応が拡がることが期待されます」