HPVワクチンによる子宮頸部前がん病変予防効果を確認
2022/10/06
文:がん+編集部
HPVワクチンによる子宮頸部前がん病変の予防効果を調査した「NIIGATA study」の結果が発表されました。子宮頸部前がん病変に対する有意な予防効果が認められました。
初交前に接種した場合は、HPVワクチンの主標的型であるHPV16/18型に関連する細胞診異常を認めず
新潟大学は2022年9月12日、子宮頸部前がん病変(細胞診異常)に対してHPVワクチンがどの程度の予防効果を示すかを検討した調査結果を発表しました。同大学大学院医歯学総合研究科産科婦人科学分野の工藤梨沙助教、榎本隆之特任教授、関根正幸准教授らの研究グループによるものです。
HPVワクチンの接種を受けた20~22歳の女性に対するHPV16/18型感染の高い予防効果と、HPV31/45/52型感染の有意な予防効果が認められることを、研究グループはこれまでに報告していました。しかし、子宮頸部前がん病変に対するHPVワクチンの予防効果を、性的活動性を加味して解析した日本人女性を対象にした報告はありませんでした。
研究グループは、2014~2020年に新潟市内で子宮頸がん検診を受けた20~26歳の女性4553人を対象に、HPVワクチン接種歴と性的活動性(初交年齢、性交経験人数)をアンケート調査し、ワクチン接種歴は自治体接種記録で確認。対象のうち3167人(69.6%)にHPVワクチンの接種歴があり、1386人(30.4%)は接種歴が確認できませんでした。
ワクチンを接種したグループと接種していないグループで、軽度扁平上皮内病変(ASC-US)以上の子宮頸部細胞診異常率を比較した結果、ワクチン非接種グループの7.3%に対し、ワクチン接種グループでは4.7%と有意に低いことが分かりました。また、高度扁平上皮内病変(HSIL)以上の細胞診異常率は、ワクチン非接種グループの0.9%に対して、ワクチン接種グループでは0.3%と有意に低く、HSIL以上の細胞診異常に対するワクチン有効率は64%であることが示されました。さらに、初交前接種者に限定して性的活動性で調整を行うと、ワクチン有効率は78.3%に高まり、細胞診異常とHPV感染の関連を詳しく調べたところ、初交前接種者ではワクチンの主標的型であるHPV16/18型関連の細胞診異常者を認めていませんでした。
研究グループは今後の展開として、次のように述べています。
「本研究グループの研究成果をもとに、厚生労働省は2022年4月より12~16歳女子に対するHPVワクチン接種の積極的勧奨を再開しました。これからHPVワクチンの接種を検討する女性に対しては、このような科学的根拠をもとに、ワクチンの効果を強くアピールしていく必要があります。また、HPVワクチンの接種を既に受けた女性に対しては、ワクチンにより子宮頸部細胞診異常の予防効果はあるものの、ワクチンを接種した女性でも子宮頸がん検診は必ず受ける必要があるというメッセージを伝えていくことも必要です。今後NIIGATA studyでは、キャッチアップ接種の有効性検証や、HPV感染に対する30歳までの長期予防効果を解析する予定です。国民の皆様に向けてHPVワクチンに関する科学的データを発信し続ける予定です」